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◎流派の壁を輪にかえて 春は本格的な演奏会シーズンの幕開け。 邦楽の演奏会も定期的な公演が多く開催されている。しかし、普段なじみのない邦楽は、きっかけがないとなかなか触れることができない。そのせいか多くの場合、邦楽演奏会といえば聴衆の少なさが目立ち、観客動員が大きな悩みの種でもある。でもその原因は邦楽への関心の薄さだけだろうか。 今回は、私自身も実行委員として企画運営に携わっている演奏会の試みについてご紹介しよう。 「邦楽春の祭典」は、認定NPO法人三曲合奏研究グループが主催する入場無料の演奏会で、今年は十五日午後零時半より、高崎市文化会館で開催される。箏曲、尺八の演奏家や愛好者たちが集い、三曲合奏(箏・三味線・尺八)を主とした、古典から現代までの幅広いプログラムで構成される。今年で十四回目を迎えるこの演奏会は、邦楽の演奏会には珍しく例年多くの観客を動員している。 邦楽の社会は、とかく縦割り社会である。なかなか横のつながりが持てず、先生と弟子、個々の単位での活動(いわゆる社中)にとどまってしまうことが多い。しかし、ここでは個の活動を大切にしながらも、横のつながりを重視し、グループそのものを一つの社中と見立て向上していこうという考え方を持っている。そして、毎年ほぼ一年間という時間をかけ、実行委員が主催者として責任を持ち、百人を超える出演者の立場、また聴衆の立場に立って、上下なく意見を出し合い企画運営していく。 こうした演奏会では、流派の違いが壁になることが多い。 箏曲には大きく分けて、生田流と山田流がある。生田流は薄めの四角い角爪(かくづめ)を用い、器楽面において優れた楽曲が多い。山田流は琴爪が山形で厚みがある丸爪を用い、主に歌(箏歌(ことうた))に重点がおかれた楽曲が多いのが特徴である。同じ流派でもいろいろな系統があるため、流派を問わない合同プログラムでは、楽譜、奏法、指づかい、そして歌の節づかいなどの統一ということが必要になる。これらの点を統一しながら曲としてまとめ上げていくのは確かに大変なことだが、共に演奏することは決してマイナスではない。演奏する側はより多くの曲を知ることになり、聴く側もより厚みのある演奏を聴くことができるからだ。 大事なのは、主催する側が本当に良いものを、他とはひと味違った新しいものを発信するのだという気概を持っているかどうかということではないだろうか。 さて、今回の聴きどころだが、昨年度の委嘱曲「上州物語」、若手演奏者による「箏四重奏曲」、山田流の箏歌と尺八がしっとりと味わえる「赤壁(せきへき)の賦(ふ)」、そして総勢四十五人による「編曲長唄 越後獅子」は圧巻だ。また子供たち二十五人による演奏や日本舞踊との共演も見どころである。 春の心地良い風を感じながら、さあ邦楽演奏会へ出かけてみよう。きっと日本の文化を目と耳で存分に楽しんでいただけることだろう。 (上毛新聞 2007年4月5日掲載) |