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◎地域の文化遺産に光を さる二月二十四、二十五日の両日、第一回東毛広域圏文化祭が大泉町の文化むらで開かれた。二〇〇一年に開催された国民文化祭を受けて県内各広域圏で開催されているものである。各市町の文化協会からは、日ごろの活動を裏付けるように、市町独自の伝統的な作品をはじめ現代的に創造された多くの作品が、ところ狭しと展示された。 一方、芸能大ホールでも長い年月の練習の成果を披露する晴れの舞台でとの思いからか、張り詰めた雰囲気の中で子供たちも一緒に出演するなど工夫を凝らしたすばらしい演技に満席の観客がどよめいたり、笑い声でホールが包まれるなど、多いに盛り上がっていた。文化面での交流の少ない傾向の東毛地域の芸能・文化、その取り組む姿勢を目の当たりにして、参加した各市町の文化協会の今後の活動の在り方にとって参考になり、大きな刺激になったと思う。 板倉町は「水と自然」の文化をテーマに参加した。板倉町の歴史は「水とのたたかい」といわれてきた。しかしその厳しくも恐ろしい水に対して常に敵対していたわけではなかった。水に親しみ、水を敬い、そして水とともに生活しつつ、その恵みを享受してきた歴史でもあった。そうした生活の中に水の文化、自然と共生する人々の心と知恵が育(はぐく)まれてきた。今でも残っている多くの祭りや仕事唄はこうした土壌の上に芽生えたものだ。 こうした板倉町の文化を広く発信していくことで貴重な伝統文化を多くの人々に認識してもらい、啓発し新たな発掘や伝承のきっかけになればと考えた。また史実を基に建造された「高瀬舟」を展示した。江戸時代に活躍したといわれる実物の三分の一の大きさだが、全長八メートルはある。 この文化祭の準備会議で集客について話し合ったことがあった。しかし結果的には取り越し苦労だった。展示ホールでも、あちこちの作品の前で人の輪ができ、作者の説明を聞いている光景が見られた。一方、芸能発表の大ホールでも満席の状態でフィナーレを迎えることができた。 市町村の合併により集落やその地方に伝わる伝統的な文化、祭り、芸能などが忘れられ、消滅してしまわないかと心配されてきた。確かに昭和三十年代の合併では時代の流れだからと、消滅してしまったものもあったようだ。しかし平成の合併によってはそのような流れは絶対に断ち切りたいものだ。このたびの文化祭はそうした願いをかなえるきっかけになったと思う。 広域圏の文化祭ということでそれぞれの文化協会は郷土色を表現しようと努力したようだ。板倉町でも復活してまもない伝統芸能を披露したり、各分野の展示にも配慮した。こうした意識が地域に埋もれかかった文化をもう一度生まれ変わらせる大きな力になると思う。各市町の遺産や伝統文化にあらためて光を当てることで、新しい発見や復活に繋(つな)がれば広域圏文化祭の持つ意義は大きく、ぜひそうありたい。 (上毛新聞 2007年3月27日掲載) |