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テクイ総研代表 平野 欽一(伊勢崎市今井町)

【略歴】 日本大法学部卒。サンデン知的財産部長を経てテクイ総研を設立。知的財産戦略や産学官連携、人材育成などをテーマに活動、著作もある。元群馬大客員教授。

群馬からノーベル賞を

◎「産学官地」でサポート

 「サラリーマンノーベル賞も夢でない」―。従来、ノーベル賞というと学者の領域のように考えられていたが、二○○二年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは、島津製作所(京都)のサラリーマン、それも当時、主任という肩書だった。

 田中さんは研究が大好きで、失敗しても決してあきらめない志、信念と執念の持ち主と聞いている。その人柄のせいか、小学校時代(四―六年)に理科の実験などで、まわりの人たちを驚かせていたとのこと(当時の恩師で前富山県上市町教育長、澤柿教誠先生談)。田中さんが生まれた富山県は、理科教育に関しては、全国一―二位の先進県である。

 ところで、ノーベル賞というと、だれもが関係ないと言う。しかし、研究への志を持ち、夢を見続け努力することは、若さのシンボルともいえる。試みに、ノーベル賞への道について、私の考えを示すと、小中学生時代に「サンシン」と「サンチュウ」と「ニネン」の志と心構えを持って、理科の授業や実験に望むことである。この「サンシン」とは(1)好奇心(2)研究心(3)探求心である。また「サンチュウ」とは(1)夢中(2)熱中(3)集中をさし、さらに「ニネン」とは(1)信念(2)執念のことである。

 これらは、ノーベル賞への不可欠の条件と考える。なせば成る。やってやれないことはない。やればできる。ノーベル賞をもらうことが目的ではないが、ノーベル賞級の研究成果は、人類の生存に大きく影響を及ぼし、世界に貢献するものである。

 日本では、自然科学の分野において、すでに故人となられた湯川秀樹博士(中間子の理論)を含め、九人の受賞者がおられる。文部科学省では、五十年間に三十人の受賞を目指している。人間の能力は無限ともいう。現在、日本にはノーベル賞級の研究に携わる研究者、学者が数多くおられる。

 話を小学生に戻すと、富山県富山市立奥田北小学校六年の山本良太君は傘の置き忘れ警告装置の発明で、平成十八年十月六日付で特許権を取得した(同年十月二十五日上毛新聞総合欄参照)。特許庁の話では、小学生が特許権を取得したのは最初とのこと。

 小学生といえども、発明を発掘できる代表例といえよう。俗に、創意工夫、発明発見、科学技術は、人類の生存に不可欠な要素であり、技術革新の原動力である。

 自分には関係ないと言わず、物ごとに関心、好奇心、問題意識を持って研究テーマに挑戦することである。試みに、発明協会(総裁・常陸宮殿下)では、毎年、全国で創意工夫作品展や少年少女発明クラブを開催し、表彰を行っている。前記したノーベル賞への道は、失敗や発明発見が糸口でカギである。失敗は成功のもと、継続は力なり。地道な努力に対し、もうちょっと理科教育を充実、大学や行政をはじめ企業・地域などで小中学生を支援しようではないか。






(上毛新聞 2007年3月16日掲載)