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かのはら・ふれあいネットワーク事務局長 新井 恒好さん(富岡市神農原)

【略歴】高崎工業高建築科卒。一級建築士事務所長。1985年に県少年警察協助員を委嘱され、現在は県少年補導員富岡地区少年補導員連絡会会長を務めている。

住民の社会参加意識

◎地道な活動が改革に

 数年前、県社会教育研究大会で、私は提案者として「かのはら・ふれあいネットワーク」について発表する機会があった。「自分たちの郷土は、自分たちで守り育て創つくっていこう」を基本理念に、子供からお年寄りまでが安心して暮らせる地域社会を目指し、富岡市神農原地区で区長を中心に住民有志の発議により自主的に設立された団体である。

 さまざまな地域活動を演出、提供することで、地域住民の社会参加意識を高めることを目的に、少しでも多くの人々が自分の身の回りの社会に目を向けることが、安全で安心して暮らせる地域社会づくりに最も大切なことと考えたからである。それには長い時間をかけた地道な活動が必要であろう。設立にあたっては、そのための工夫がなされた。組織面では、区の組織として位置付け、該当年度の区長が会長を務めることや、代々の富岡署長に顧問を、同署生活安全課長に相談役を依頼するなど行政や関連機関との連携を図った。

 また、運営管理・資金面でも完全に自立させ、地域住民の自主的な活動を旨とした。「先ず実践」をモットーに、何でも気が付いたことを実践してみることから始めることとし、活動への参加は決して強要せず、「誰でも、どこでも、できる時にできることを」が基本姿勢である。

 活動は多岐にわたり、お祭りや文化祭、ハイキング等の交流の場づくり、自主防犯パトロールや青少年健全育成活動、地域の環境問題に関すること、行政機関や関連機関への積極的な協力など「気が付いたことは何でも」である。

 概略、以上のような趣旨の提案説明をした。

 その後の意見交換会で、幾つかの質問や指摘があった。その一つに「会則には、該当年度の区長が会長を務めるとありますが、その時の区長さんが嫌だと言ったら、どうしますか」という質問があった。確信はないが、私はこう答えた。「われわれ区民が、会長を引き受けてくれる人に区長をお願いしますから大丈夫です」

 また、こんな指摘もあった。ある女性出席者の一言だった。「あのねー、教えときますけど活動資金はどうするんですか。お金がなければ何もできませんよ。私たちも行政から助成金をもらって街道に花をいっぱい植えましたけど、助成金が打ち切られたら、それで活動は終わりでしたよ」。ご忠告は肝に銘じておきますと答えたが、われわれは最初から行政や他機関の助成金などは当てにしていない。自主自立を目標に、必要な資金は自分たちで工面し、できた資金の範囲内で活動する―というのが基本的なスタンスである。

 お金を掛けなくてもできることはいくらでもあるはずだ。お金を掛けた派手な活動は、啓発にはなっても啓蒙にはなりにくいと思う。地道なきめ細かな活動が本当の意味での住民の意識改革につながり、こうした活動を広げていくことで社会全体が自己責任に目覚め、安心して暮らせる世の中が出来上がるのではないか。






(上毛新聞 2007年1月5日掲載)