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◎意識を変え方策を模索 近年は地球温暖化の影響か暖冬が続いて、東京では庭に雪が積もることが少なくなってきている。自分が子供のころ、群馬ではよく雪が積もり、その雪の中を長靴で走り回ったことを思い出すと、隔世の感のある今日である。 しかし、昨冬は少々様子が異なり、各地で豪雪となった。幸いにも群馬県下では発生していないが、全国的に見ると十六道県で九十二件の雪崩が発生し、死者一人、負傷者三十七人、家屋被害八戸という災害が生じた。 とりわけ今年二月十日、秋田県仙北市田沢湖町の鶴の湯温泉で発生した雪崩災害では、高さ八十メートル、幅百メートルにわたる表層雪崩が温泉施設を破壊し、入浴者や屋外で配管作業を行っていた作業員を巻き込んで、死者一人、負傷者十六人という悲惨な被害を与えた。 観光県群馬でも他人事ではない。昭和二十年一月には当時の水上町の湯之花温泉で雪崩が発生し、二人の死者が出る被害が生じている。 雪崩の速度は表層雪崩で毎秒三十―五十メートル、全層雪崩で同十―二十メートルという値が記録されている。とても人間が競走して勝てる速さではない。鶴の湯温泉でも、「アッ」という間の被災であったものと思われる。 雪崩は発生の形、雪質、すべり面の位置により学術的分類がなされている。一方、全国各地では、先人たちは学術的名称とは別に、古くから独自の名を付けて雪と付き合ってきた。 例えば、江戸時代の雪国の生活を書いた鈴木牧之の『北越雪譜』では「ほうら」という名で雪崩が登場し、恐ろしいものとされている。現在でも全国的に見ると、全層雪崩に対してはナデ、ナゼ、ズリ、表層雪崩に対してはアワ、アイ、ワスなどという名称が使われている。群馬県では全層雪崩はナデ、ユキナデなどと呼ばれており、表層雪崩はホー、ホヤ、ドイオチなどと呼ばれている(『雪崩とその対策』雪崩対策研究会)。 前述の「ほうら」は現在でも新潟県で表層雪崩を示す言葉として用いられている。 わが国は国土の52%が豪雪地帯という雪国で、農作物や上下水等の水資源などに雪の恵みを受けるとともに、雪崩という形で災害も受けている国である。 以前、群馬で開催された雪崩防災シンポジウムで、出席したパネリストから「最近、雪崩に対する認識が薄れてきている」という意見が出され、「一人一人が雪崩に対する知識を持つこと」や「雪とうまく付き合うこと」の大切さが指摘された。 すでに雪国の多くの地域では克雪から利雪へ、そして親雪へと意識を変えて、雪とうまく付き合う方策を模索している。また、雪を用いたり、テーマとした地域の活性化も全国各地で実施され始めている。 長期予報による今年の冬は日本海側で雪の日が少なく、太平洋側で雪の日が多いと予測されている。雪についても先人の知恵を知り、新しい科学の知識を知って、自然とうまく付き合っていきたいものである。 (上毛新聞 2006年12月31日掲載) |