視点 オピニオン21
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地球屋統括マネジャー 小林  靄さん(高崎市東町)

【略歴】前橋市生まれ。ちょっと変な布紙木土「地球屋」のデザイナー兼統括マネジャー。本名洋子。古布服作家、歌人としても活躍。著書に「花の闇」など。

子供たちに

◎好きなことに没頭して

 子供たちを巻き込む痛ましい事件が多発している今日、さまざまな立場の方々がこの欄でもいろいろな提言をされているが、私に、この立場でできることがあるのだろうか。

 新聞・テレビなどのメディアが各方面の有識者の意見を報道している。しかし、いまだこれといった解決策は見当たらない。一朝一夕には変えることのできない、これまでの長い間の悪弊等が一気に噴出してきてしまったような気がする。戦後の、急激に変化を要求され、己を省みる時間すら与えられず、がむしゃらに国の再生に向けて動いてきたが、今ようやく国の進むべき方向を、与えられたものではなく、自分たちで考えなくてはならなくなってきている。

 人に考えを委ねるのではなく、自ら決断を下さなくてはならない、自分で自分の責任を取らなくてはならない時代になってきている。その過渡期とも思われ、各分野でそれらが表ざたになり、責任を強制的に取らされている。

 さまざまな事件が表ざたになってきているということ自体が、今までと異なり、隠しきれなくなってきていることであり、そういう時代に好転していると考えたい。

 では、これからどうするのか。特に、これからの子供たちに私たちは何を示さなくてはならないのか。いじめに遭い、自殺を考え、希望をなくしている子供たちに、何かをしてあげられるのか考えなくてはならないと焦る。

 今までの自分を省みると、落ち込み、生きる望みを失った時期もあり、人を恨んだこともあった。恨むことが生きがいになったこともある。その気持ちを、私は歌に託した。歌に逃げたといった方が適切かもしれない。ただの愚痴は人の共感を得ることができず、共感を得るために何度も何度も推敲(すいこう)を重ねているうちに、だんだん歌にのめり込むようになった。

 「恨み」を表現する最も有効な事象なども、観察していくうちに全く別な面を持っていて、結構こっけいであったりもする。第三者の目で物事を見るような癖がつき、腹も立たなくなった。気付かないうちに、歌を作ること、物を作ることなど、何かを創造するということで、傷ついた心が癒やされていたようである。

 若者に、子供たちに、何かを創造する、自分を打ち込めるような何かに逃げてみてはどうかと思う。もっとも、心の沈んでいる時には何もする気になれないかもしれない。そんな時はとにかく周りのことよりも好きなことに没頭してほしいと思う。

 周りのことを考える余裕ができるまでは、じっと、自分の好きなことを考えていればよいのではないか。今の私たちはできることがあれば協力できる年代でもある。






(上毛新聞 2006年12月22日掲載)