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◎地域を学習する組織に 「エコミュージアム」という言葉をご存じでしょうか。この言葉は、一九六〇年代にフランスの博物館学者、アンリ・リビエールが提唱した新しい博物館の考え方を言います。現在は、世界で幾百ものエコミュージアムが存在します。従来の地域にある博物館が建物に収集品を保存し、展示することで、狭い範囲の文化を継承し、伝承していくものなのに対し、このエコミュージアムの考え方は設定した地域全体を博物館と考え、地域を学習し、交流していく活動と施設を指します。 日本語では「生活・環境博物館」「地域まるごと博物館」などと翻訳されています。エコミュージアムは、その地域生活そのものを保存展示し、そこに生活する人たち自身が地域や自分たちの生活を知り、興味をもつことによって地域の活性化を図り、発展を目指すことを目的にしているのです。 私は、浅間山北ろくに住んで観光を生業(なりわい)とする仲間たちと「浅間山ミュージアム」という団体を立ち上げ、運営しています。この団体は、まさにエコミュージアムの考え方を基本に成り立っています。 そもそも「浅間山ミュージアム」を立ち上げるきっかけとなったのは、二年前の浅間山の噴火後にさかのぼります。近くにあり、いつも見ていながら浅間山のことをまったく知らず、興味もなかったのです。ところが、噴火の影響で観光客は減少し、私たち観光業者は大変な思いをすることになりました。しかし、大変だと言っているだけでは解決にはなりません。そこで原点に立ち返り、まず浅間山を理解することから始めようと考えたのです。 そして、まず初めに群馬大学の早川由紀夫教授に「明るく楽しい浅間山学習会」の開催をお願いし、一年間の火山学習会を行いました。この学習会の中で鹿児島の「桜島ミュージアム」を主宰する福嶋大輔先生と出会い、エコミュージアムの考え方を学び、同じ火山を持つ地域同士の連携として「浅間山ミュージアム」を立ち上げることになったのです。 会の立ち上げから一年が経過し、活動も出発点となった火山学習会と同時に、会員が興味を持った地域の文化や歴史をテーマに学習する組織へと発展しました。会員は、地元の観光業者以外の一般会員も含めて五十人以上となっています。 現在行っている具体的な学習会は、嬬恋郷土資料館の前館長・松島栄治先生による天明三年の浅間山噴火関連の古文書講読会と縄文土器作り学習会、嬬恋村郷土史家・唐沢雅夫先生による嬬恋村の歴史学習会など、歴史文化に関連した学習会です。これらの学習会は聴講するだけではなく、先生方の講話内容を文章記録として残す作業も同時に行っており、まさにエコミュージアムの実践といえます。 そのほか地域の活動としては、浅間山北ろくに残る近代遺産の保存・記録活動など多岐にわたっています。これから何回かに分けて、私たちの詳しい活動を紹介していきたいと思います。 (上毛新聞 2006年12月16日掲載) |