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「しんまち学ぶ会」副会長 佐藤 真喜子さん(高崎市新町)

【略歴】亜細亜大経済学部卒。防犯パトロール隊「新町サポーター」、「新町歌劇団」などで地域づくりや文化活動に尽力。「よみがえれ!新町紡績所の会」副会長。

『おにころ』公演

◎輝き取り込んで結実を

 新町歌劇団の今年初のステージは一月二十二日、高崎市庁舎一階ロビー特設ステージで行われた新高崎市誕生イベントへの出演でした。

 創作ミュージカル『おにころ』は、前橋市在住の版画家で絵本作家の野村たかあき先生が新町のために書き上げた創作民話です。鬼の子「おにころ」が神流川で心優しい喜助・うめ夫婦に拾われ、育てられます。「おにころ」は村人のいじめや迫害に耐えながら成長し、最後は上州と武州の水争いの中で自分の身を犠牲にして村人を助け、村人たちを愛に目覚めさせる―というストーリーです。

 この民話に心を動かされた新町歌劇団の音楽監督、三沢洋史先生(新町出身)が創作ミュージカル『おにころ』として誕生させ、平成三年五月に新町文化ホールのこけら落としで初演されました。新町の子供たちや新町のために作られたミュージカルでした。

 五回目の公演は、主役「おにころ」に高崎市出身の泉良平さん、うめに前橋市出身の内田もと海さんを迎え、妖精メタモルフォーゼに高崎市の余川倫子さん、ピアニストに同市の小林直子さん、そして裏方の青年会議所、地元の方々の支援に支えられて、五月十三、十四の両日、満席で幕が下りました。

 今年八月、『おにころ』は地元を出て初めて、東京・国立市芸術ホールで前述のプロのソリストの方々と、くにたちミュージカルワークショップのメンバーで上演されました。公演には新町公演の際の大道具、小道具、衣装が使用され、新町歌劇団メンバーも裏方の応援にかけつけました。クライマックスの合唱を三沢先生指揮の下、会場と舞台が一体となって歌いました。新町で子役を演じた子供たちも目を輝かせて歌いました。

 新町の舞台では、子供から高校生に成長した三人が大人の役で舞台に立ちました。練習の中で成長していく子供たちを見ていくのは、とても楽しみです。教えているつもりが、いつの間にか教えられ、助けているつもりが助けられ、四歳から七十代までの仲間が一つになって取り組んできました。

 そして、もう一つの楽しみはミュージカルの副題にもなっている「愛をとりもどせ」の曲が十月の高崎市連合音楽祭、十一月の藤岡市小中学校音楽発表会で、高崎市新町第一小、藤岡市美土里小の児童によって歌われたことです。子供たちは心を込めてこの曲を歌い、会場から盛んな拍手を受けていました。

 今年は『おにころ』に始まり、『おにころ』で終わる一年でした。

 数年後になりますか、六回目の『おにころ』公演に取り組むとき、私たちはこれまでの五回公演のさまざまな広がりと輝きを取り込んで、新たな『おにころ』に結実していけることを願っております。

 愛をとりもどせ 人と人の間に 夢を描こう 私達の未来に

 Love come back again

 Love come back again

 信じ合うなら この世は 変わるよ






(上毛新聞 2006年12月10日掲載)