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◎インターネットが開く 一社一技術の選定を行うなどして「ものづくり立県」を目指す本県。なるほど、身近な人たちの中にも製造加工業の従事者は多い。私の父はかつて自動車部品を作る町工場をやっていたし、親せきや知人にも「腕一本(技術力)で家族を養っている」と豪語する人はたくさんいる。 だが、製造加工を生なり業わいとする方たちと話すと、たいていの場合、厳しい社会の現実をうかがうことになる。いわく、納品先であるメーカーに製品単価の見直しを迫られたり、新規販路の開拓がどれほど難しいかなどである。コスト削減の名のもと、まず矛先が向けられるのは製造原価や工賃だろうし、生産者が常に厚遇されてきたかといえば、必ずしもそうではなかった。 ところがこの数年、製造加工業を取り巻く状況に変化が見えてきた。その立役者は、インターネットだ。生産者と消費者がダイレクトにつながることで、両者にメリットが生まれる。消費者は流通マージンが発生しない分、商品を安価に入手できる。一方、生産者は顧客ニーズをじかに受けて、次の生産にフィードバック。ユーザーが求める品質やサービスをストレートに取り込めるばかりか、どれほど特殊な製品であっても全国が商圏だから、需要が眠る“鉱脈”をうまく探し出せれば大きなリターンが期待できる。 私の知る範囲内で、県内の具体例を示す。生花店を営むフラワーデザイナーのAさんは以前、結婚式を彩るブライダル関連の仕事を式場の依頼で請けていた。だが、数年前にインターネット上で自身のフラワーアレンジをメーン装飾にしたブライダルの提案を始めたところ、結婚式についての相談や仕事の依頼が多く寄せられる結果に。 今では、Aさんが顧客から希望内容を聞き取り、それに見合う式場を探す「ブライダルプランナー」としての地位を確立するまでになった。また、Aさんの作品を贈り物として使いたいという依頼も同時に急増、今年の「母の日」には全国から数百件の注文がきたという。日々更新されるホームページで、創意工夫を詰め込んだ独創的デザインの新作アレンジを次々と発表し、インターネット上の人気ランキング(生花部門)では、常に上位で紹介されている。 これほどの大成功ではないにしろ、生産者がインターネットを利用して頑張っている例はまだある。私が親しくさせていただく老舗和菓子店のBさん、同じく代々続くお茶屋のCさん。お二人とも、自社で製造開発した品をメーン商材に、インターネット通販で新規の販路開拓を模索中だ。まだ参入したばかりで売り上げは小さいが、どちらもページの更新頻度や新規客へのアプローチ手法など申し分なく、ほどなく群馬を代表するネットショップに成長するだろう。 紹介させていただいた三者は、決して「特別な事例」ではない。眼前に広がるチャンスを敏感にとらえ、努力をいとわず、日々の研さんを続けているだけだ。「ものづくり立県ぐんまは、インターネットが開く」。県内で製造、加工に励む方々に、エールとして送りたい。 (上毛新聞 2006年11月24日掲載) |