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◎競争の時代も担い手に わが国における福祉の主たる担い手は「社会福祉法人」である。 社会福祉法人とは、社会福祉法に基づき、「社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人」である。「公益性」「非営利性」という特性を持つ一方で、施設設備に対する補助や税制上の優遇措置等が認められている。 この社会福祉法人制度は、昭和二十六年の制度創設以来、わが国の社会福祉の発展において大変大きな役割を果たしてきた。しかし、近年、社会福祉法人を取り巻く環境には、その土台を揺るがすような大きな変化が起こってきている。 とりわけ、介護保険制度の導入による変化の影響は大きい。行政がサービスの配分を行う措置制度から、利用者が契約に基づきサービスを利用する仕組みが導入され、その結果、過去に例がない全体のパイの拡大という状況を迎えた。新たな福祉の担い手として民間企業等の参入が、在宅分野を中心として急速に広がり、社会福祉法人は、これらの多様な実施主体との競合という状況に直面している。 さらに加えて、福祉の分野におけるさらなる民間企業の参入や競争条件の均一化(イコール・フッティング)を求める主張もあり、これは、社会福祉法人の役割や優遇措置の正統性について大きな問題を投げかけているといえる。 また、国の財政は非常に厳しい状況となっており、累次の介護報酬の引き下げが行われ、さらには、施設整備の国庫補助金が交付金化・一般財源化されるなど、こうした面からも社会福祉法人をめぐる状況は厳しいものとなってきている。 措置制度の時代には、補助金と措置費によって、国の基準通りやっていれば運営は何とかなってきた。それを甘えがあったという人もいるが、余分なことはやれない制度下に置かれていたのである。それが激しい環境変化の中で、生き残りをかけた競争の場に立たされているのである。 これからも拡大が予測される福祉の分野に、民間企業をはじめ、さまざまな実施主体が参入し、健全な競争が行われることは、望ましいことである。しかし、主たる福祉の担い手としては、やはり、非営利で公営性を追求する社会福祉法人が最もふさわしいと思う。効率性のみを追求して、福祉を営利の対象にしてはならない。そのために社会福祉法に基づいて社会福祉法人が設立されているのである。 社会福祉法人としても、今のままでいいということではない。厳しい環境の変化に的確に対応しつつ、新たなニーズに積極的に応えていく必要がある。しかし、課題は多い。 厳しい競争の時代において、福祉の担い手の主役たるべき社会福祉法人の経営の在り方をどう確立するか、公益的使命をどう果たしていくか。その対策と具体的な取り組みを急ぐべきである。 (上毛新聞 2006年11月9日掲載) |