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◎食べ残さないが基本 地球温暖化による気候変動で、世界の農業生産が打撃を受ける可能性が高まっている。二〇〇〇年に穀物生産量が消費量を下回って以降、世界の穀物需給は逼ひっ迫ぱく状態が続いている。そんな状況の中で、日本の食料自給率(カロリーベース)は40%と先進国中最低である。食料・農業・農村基本計画において、平成二十七年度までに45%に引き上げることを目指しているが、回復の兆しは見えない。 天ぷらそばを注文すると、そば粉は中国産、エビはインドネシア産、ころもの小麦としょうゆの大豆はアメリカ産で、薬味のネギだけが唯一、国産だったなどということも珍しくない。また、トンカツの豚肉は国産でも、豚の飼料は四分の三が輸入という現状である。 食料がどれだけの距離を移動したかを表すフードマイレージは世界一で、日本は世界最大の食料輸入国となっている。そのため、国内農地の二・五倍もの海外の農地が、日本人の食料生産のために使われている状態である。輸入に伴って、バーチャルウオーター(水分)や窒素分なども運ばれ、環境バランスを崩している。 一方、国産農産物について見ると、ハウス栽培のおかげで一年中トマトやキュウリが食べられるが、加温栽培では露地栽培の八―三十倍のエネルギーが投入されるという。見た目は同じ野菜でも、栄養価では露地栽培にはかなわない。身体を冷やす夏野菜を冬に食べるのも理にかなわない。重油の値上がりは、ハウス栽培の採算性を圧迫しているが、この際、木質チップボイラー導入によるバイオマスエネルギーの活用を検討してほしい。 しかし、基本的には食卓に旬を取り戻し、農産物直売所などで販売されている地元のとれたて野菜や、生協などの産直有機栽培農産物を積極的に活用したい。 世界中から食料を大量調達していながら、年間約二千万トンもの食品廃棄物が排出されている。一方に九億近い栄養不足人口がいる世界の中で、飽食日本の現状は早急に改善されなければならない。食品リサイクル法では来年三月末までに、減量または再生利用率20%を達成することを食品関連事業者に義務づけている。再生利用策としては堆肥(たいひ)化が主流であるが、飼料化により少しでも自給率向上を図るべきである。また、廃食用油については、バイオディーゼル燃料の普及に期待したい。 家庭ごみは食品リサイクル法の対象外だが、可燃ごみに占める生ごみの比率は重量ベースで60%前後である。収集や焼却処理段階で余分な化石燃料の消費をもたらす生ごみを減らすため、調理段階で食材を無駄なく使い切るエコクッキングを取り入れ、食べ残さないよう余分には作らないようにしたい。それでも出る生ごみは水切りを徹底し、庭のある家庭ではコンポスターで堆肥化を図りたい。 地元で生産された食品、特に農産物は旬のものを選んで無駄なく調理し、食べ残さないということが、健康と環境を守る基本である。 (上毛新聞 2006年10月16日掲載) |