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昭和村商工会事務局長 根岸 秀樹さん(昭和村貝野瀬)

【略歴】沼田高校卒。昭和村役場の住民課長、議会事務局長、企画課長などを歴任。定年後、同村商工会事務局長に就任した。NPO法人「清流の会」事務局長。

不合理なシステム

◎自然の摂理に従いたい

 人間は食料を生産する力をもち、それを備蓄する知恵を備え、ほかの生命体とは異なった道を歩き始めました。以後、人間は生活の合理化や社会の利便性を人間の幸福と考え、科学や技術を進歩させてきました。その結果、人間の身の回りではたくさんの「もの」が安易に手に入り、ぜいを尽くす生活を始めるようになりました。

 そして、ものを有機的かつ機能的に活用し、利便性を高めるために、さまざまなシステムを構築し、幸福感や充実感を味わっています。

 また、自由に移動できるようにインフラ整備し、人間だけが都合のよいものをたくさんつくってしまいました。人為的につくられたものには自然の摂理は機能せず、自浄能力の欠如した人間だけが住みやすいと思っている独自のシステムのため、人間の都合でどうにでも変形してしまいます。人間には好都合ですが、自然界から見たら、とてつもなく不合理なシステムです。そのシステムは共存共栄とはほど遠く、増殖スピードは速く、現在では大きな化け物のように膨らんでしまいました。

 しかし、自然の摂理を無視し、目先だけ人間に都合のよい、このようなシステムは多くの社会問題を生み、多額な社会コストを次世代に押し付ける情況になりつつあります。このままでは、近い将来、人間を取り巻く環境は悪化し、身動きの取りづらい環境になってしまうのではないかと心配しています。その前兆として、地球温暖化や異常気象等、地球規模でいろいろな問題を起こしているのではないでしょうか。

 足元を見ればダイオキシンや環境ホルモン、そして最近ではアスベストやウイルス感染症等の問題が次々と起きていることからも、うかがい知ることができると思います。この問題は、エネルギー源を比較的安価な化石燃料に依存し、食の源を国外に依存しながら大量のごみや産業廃棄物を排出する今の生活環境を維持している以上、解決の糸口を見つけるのは難しいのではないかと思います。

 現在のように競争原理に基づく市場価格が優先されるのではなく、社会コストを含めた新しい経済体系をどう構築するかが喫緊の課題だと思います。社会コストは国民が自分の財布から直接支払うコストでないため、比較的無視されやすいのですが、次世代は必ず支払わなければならないコストであることを、現在の人が強く認識する必要があると思います。そのためには少々不都合でも再生可能なエネルギー(太陽熱、風、ごみ、バイオ等)を活用し、環境にできるだけ負荷をかけない生活を選択しないと、地球の病はますます深刻になってしまいます。

 それは、われわれの生きる根幹である住や食の環境を悪化することであり、快適さを求めているはずなのに、実はその逆の方向へ進んでいることに早く気付くべきではないでしょうか。

 われわれも自然の一員であることを忘れず、自然の摂理に従い、日々の生活を営まないと重大な結果を生むことになると思います。宇宙から見ると、地球はとても美しいそうです。次世代に、より美しい地球を引き継ごうではありませんか。






(上毛新聞 2006年10月11日掲載)