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県立尾瀬高校自然環境科主任教諭  松井 孝夫さん(沼田市善桂寺町)

【略歴】92年千葉大卒。西邑楽高を経て、97年尾瀬高教諭となり、翌年から現職。同校理科部顧問。ぐんま環境教育ネットワーク代表理事。

啓発活動の実践に期待

◎高校生環境サミット

 尾瀬ケ原、四万十川、屋久島、釧路湿原、阿寒湖、有明海、玄界灘…。いずれも豊かな自然の情景が目に浮かぶ。これらの地域には、いずれも環境教育に積極的に取り組む高校がある。

 これらの高校を中心に、毎年八月に「全国高校生自然環境サミット」を開催し、今年で七回目を迎えた。このサミットは「自然との共生」をテーマに、二泊三日のイベントを高校生自らが企画・運営しているのが特徴。課題の設定や参加者への連絡はもちろん、会場や輸送の手配、開閉会式やプログラムの進行など、ほとんどを高校生だけで行っている。また生徒が実行委員会を組織していることも特徴の一つである。

 このサミットでは「開催地の自然の中での豊かなふれあい体験」も基本方針の一つに挙げている。ここで大切なのは「豊かな自然」ではなく、「自然との豊かなふれあい」ということである。つまり冒頭で挙げたような景勝地のイメージではなく、都市公園や家の周りの「身近な自然」との豊かなふれあい体験である。

 「自然との共生」を目指すならば、その共生相手がどのようなものなのか、正しく理解することが大切である。人の話や資料だけでは十分な情報は得にくく、また時代や地域に応じた自然理解は難しい。まずは、身近な自然とのふれあいを大切にしたいと考えている。

 福岡市内の公園などを会場として開催した今年のサミットでは、実行委員としてかかわる生徒が増えてきた。ただの参加者としてではなく、環境に関するイベントの企画・運営に主体的に携わる面白さが、多くの高校生の間に伝わっていることを強く感じることができた。

 このサミットは、来年は沖縄「やんばる」が会場になる。その次は、東京や横浜などの大都市での「自然との豊かなふれあい」をイメージし、すでに五つの高校が名乗りを上げている。

 こういったことは、環境教育に力を入れている高校にとっては、とても喜ばしいことである。それは「環境に対して自ら責任ある行動を取れる」ということだけでなく、「多様な社会の中での環境教育のリーダーの育成」を目指しているからである。

 つまり「啓発活動」を実践する意欲や能力の育成も大きな目標としているのである。彼らには、高校卒業後は環境の専門家としてだけではなく、多様な進路に進み、それぞれの立場で、自分にかかわる多くの人への「啓発活動」を実践してほしいと期待している。「自然の中での遊び(自然体験)」や「自然観察会」など、身近な自然を生かした企画を立て、実行することを願っている。

 活動意欲と実践力を身につけた高校生たちの今後の活躍が楽しみである。






(上毛新聞 2006年9月30日掲載)