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東京農工大学名誉教授 鹿野 快男さん(高崎市城山町)

【略歴】東京都出身。明治大大学院博士課程修了。主な専門は磁気回路、リニアモーターなど電磁機器の福祉機器への応用研究。元国立公害研究所客員研究員。

環境保全の方法

◎受益者負担などを徹底

 太平洋東寄り海上で発生したハリケーンが、日付変更線を越えて、台風となって日本列島沖を北上した。ハリケーンが台風になって、七メートルの高波を日本の海岸にぶっつけたなどという話は初めて聞いた。前からあった現象だったであろうか。また、今年の梅雨は平年とだいぶ違い、「局所的短時間大雨注意報」が連発され、がけ崩れ、土石流災害を起こした。ニュースで「過去最高の雨量」「一時間で何百ミリの降雨」「過去最低の日照」など記録破りであったことを伝えていた。

 地球が温暖化して、温帯に属する日本が亜熱帯化しているために起こる異常気象ではないであろうか、と心配になる。日本だけでなく、ここ数年、世界各地で集中豪雨や異常乾燥の災害が発生している。このようなことを聞くと、各国すべての人が省エネルギーを実行し、地球の温暖化を食い止めなければならないはずである。しかし、言うはやすく、実行は難しい。石油高騰に対して、各国はエネルギー確保に躍起になっている。

 そこで、環境問題を効果的に解決するために、次のことを提案したい。

 その一 学習(教育)すること。環境問題が多くの人に大分認識されるようになってきたとはいえ、まだまだ個人差がある。できるだけ多くの人に問題点と解決策を学んでもらいたい。具体的に知れば、冷暖房一つ、ごみ一つでも、それに対処する態度が変わるであろう。

 その二 受益者負担の原則を徹底すること。または、課税すること。例えば、ほかの人より多量にエネルギーを使って快適に過ごす人には、それなりの金銭的負担をしてもらう。多くエネルギーを消費するなら、それに見合った金銭的負担を累進課税のように払ってもらうのがよい。大排気量の高級乗用車に乗って快適に過ごそうとするならば、十分な代償を支払ってもらうのが妥当である。代議士や大会社の社長でも、省エネの立場から軽自動車を使っている人もいるそうである。ステータスシンボルで大排気量高級乗用車に乗る時代は終わったことを認識してもらいたい。

 その三 法律的規制をすること。環境保全の大切さを学習して、皆が紳士的に環境を破壊しないように行動してくれればよいが、なかなかそうはいかない。冷房を強くして厚着をする人もいる。冬に暖房の温度を高くして、薄着をする人もいる。産業廃棄物を不法投棄した後始末に、多量のエネルギーを使わなければならなくなることもある。適正な法律を作って、皆で守り、守らない人を罰するしかない。

 その四 省エネ技術の向上と技術開発をすること。同じ生活を維持するにも、省エネ、省資源の方法がある。そのような方法を個人レベル、政策レベルで実施することである。人間の知恵である科学技術を使って、人間に都合のよいように自然を酷使する近代西洋科学文明の時代は終わったことを再確認したい。

 この四本立てで環境問題を解決するのが、最善と考えられる。






(上毛新聞 2006年9月27日掲載)