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多野東部森林組合長 新井 和子さん(藤岡市本郷)

【略歴】藤岡女子高卒。参事、常勤理事を経て今年6月から現職。県森林組合連合会理事、多野藤岡林業振興協会長、県の土地利用審査会、公害審査会、環境審議会各委員。

森林の整備・保全

◎社会全体で支えたい

 毎年恒例の森林組合地区座談会を七月三十一日から八月四日に開催した。林業をめぐる諸情勢が厳しい中で、少しでも林業について関心を持ってもらうため、夕方の六時から二時間程度、組合員である森林所有者の意見を伺った。

 今年は、県西部県民局の藤岡環境森林事務所、そして県産材加工協同組合にも同席していただいた。座談会に参加いただいた組合員は、高年齢の人たちがほとんどである。その席で出された意見要望は次のようなものだった。

 「山の木を切って金になるのか。金になるなら切りたい」「後継者もなく、所有林の境界が分からなくなってしまう」「産業廃棄物が捨てられて困っている」「造林しても維持管理に金が掛かる」「道端ぐらいは景観を考え、公共機関で整備してほしい」「竹林が拡大して困っている」「木材価格が安く、造林や山の手入れができない。施業に金がかからないようにしてほしい」「木材価格が安すぎて、伐期を迎えているのに切れない。このままでは山が荒廃してしまう」「豊かな森林や良質な木材を育てるには間伐が大切で、森林整備や木材の搬出には作業道の開設が必要。森林の維持管理のため、補助金を増やしてもらうよう要請してほしい」「環境税を創設し、森林の維持管理に充ててもらいたい」

 これらの意見にみられるように、木材価格の低迷等により森林整備や伐採に対する組合員の意欲は著しく低下し、林業生産活動が停滞している。林業経営は経済活動として成り立ちにくくなるほど、極めて厳しい状況下に置かれており、今までにない深刻さが伝わってきた。

 私としては、森林組合の有する人・物・情報等の資源を最大限に活用し、地域の森林の管理・経営が持続的に行われるよう、市町村等と連携しながら安定的・効率的な経営の確保に向け、組合員の方々のために最善の努力を尽くさなければならないと心に刻んだ。

 また、森林に対する国民の期待は、国土の保全、水源のかん養等の公益的機能や地球温暖化防止などの環境面で高まっている。間伐などの森林整備を怠ると、水の源である森林の荒廃は進み、森林機能の維持増進を図ることは困難となってしまう。

 豊かな森林があればこそ、水道の蛇口をひねれば水が出てくる。私はいつも水を使うたびに豊かな自然のありがたさを感じる。石油などの豊富な資源を保有しているが、生活に欠かせない水が不足している国もある。その点では、日本は恵まれた環境下にあるといえる。

 この状況を次世代に引き継ぐためには、豊かな森林を維持管理していかなければならない。森林の恩恵を受けている下流首都圏の人たちにも理解をしていただき、森林の整備・保全を目的とした国レベルでの環境税の創設などにより、社会全体で山村や森林を支えていくシステムが求められている。






(上毛新聞 2006年9月26日掲載)