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◎人を勇気づける社会に 厚生労働省がまとめた「平成十七年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は女性が八五・四九歳で二十一年連続の世界一、男性は七八・五三歳で第四位と、日本は世界有数の長寿国である。平均寿命が世界で一番短い国は三〇歳台で、長寿国とは五〇歳弱の開きがある。平均寿命が長い国の共通点は、生活水準が高く、医療が発達していること。逆に短い国は、栄養不良、衛生・医療面での不備、教育不足などさまざまな問題が浮かび上がる。 わが国も終戦後の昭和二十二年、女性は五三・九六歳、男性は五〇・〇六歳だった。このように長寿国となったのは、前世代の地道な努力のたまものである。ところで、平均寿命とは何だろうか。平均寿命とは、生まれたばかりの赤ちゃんがこれから何年生きられるかを予測した数字である。つまり、その年の年齢別死亡率から予想した〇歳児の平均余命が平均寿命である。仮に平均寿命が八〇歳の場合、現在六〇歳の人があと二十年生きるということではない。各年齢の平均余命は、これより少し長い。 国連の統計では、高齢人口(六五歳以上)の割合(高齢化率)が7―14%の社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」という。わが国は、大阪万博の年・四十五年に7%を超えて「高齢化社会」に入り、平成七年に14%を超えて「高齢社会」に入った。そのスピードは他の西欧諸国より二倍も速い。そして、昭和二十五年に4・9%だった高齢化率は本年、21%を超え、平成二十七年には26%になると予測されている。 つまり、昭和二十五年に人口の二十人に一人であった高齢者は、今や五人に一人に、そして八―九年後には四人に一人になる。高齢社会における「官・民・個人それぞれの役割と責任」を明確にし、全世代が安心して暮らせるシステムをつくっていく必要がある。 また、急速な高齢化の中で「少子化」「核家族化」等により、家庭での介護が難しくなってきている。介護の在り方、老後の保障や生きがいについて、全世代が向き合うことが必要である。そのため、国は「社会保障・構造改革の第一歩」として介護保険制度を設け、進めてきた。介護を社会全体で支えるという、最近の政策ではよい制度だと思う。八八歳を過ぎた父が三月から入退院を繰り返しているが、病院の医師や看護師、介護福祉士、リハビリセンター、ケアセンター等の皆さんに心から感謝している。 その介護保険制度も今年四月に改正されたが、真に時代のニーズに合った制度にするには、被保険者や現場関係者の声を聞くことが大切だ。どんな制度も「つくり方」より「使い方」が重要である。人口構造に合わせて社会や企業構造も変わる。しかし、市民の喜びと悲しみが分かる社会、努力する人を勇気づける社会でありたい。 努力しない人は不満を口にしたり他人の責任にするが、努力する人は常に自己の責任とし希望を語る。これからの社会、高齢期をどう生きるかは、すべての人の課題だ。「生も一度きり 死も一度きり 一度きりの人生だから 一年草のように 独自の花を咲かせよう」(坂村真民「一年草のように」)ではないか。 (上毛新聞 2006年9月18日掲載) |