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◎広めたい教育支援活動 NPO法人アジア交流協会を立ち上げて三年半が経過。きらびやかなタイの首都バンコク、観光が目的の方には一見華やかな大都会と感じるかもしれないが、夜のバンコクは一変する。歩道には物ごいの幼子、乳飲み子を抱えた十代の母親の姿が目に付く。マレーシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア等に接するタイの国境付近の村落の貧しさは相当なものだ。マレーシアの首都クアラルンプールも同様である。ラオス、カンボジアに至っては首都を含め、総じて貧困にあえいでいると感じた。 長女がタイ人と結婚したのを機にタイの実態を知り、隣国のラオスやカンボジアへとボランティア活動の輪を広げてきた。実態を知れば知るほど、国づくりの原点は人づくりであることを痛感している。校舎、図書館等の箱物の支援には相応の資金を必要とするし、限界がある。しかし、教材などの寄贈や学費を必要とする子供たちへの金銭的支援は、大きな負担とはならないと思う。自身の知識や労力を提供する教育支援もある。 カンボジアでの教育里親制度は、大勢の方々の善意の支援があって実を結びつつある。北海道から鹿児島県まで支援の輪が広がり、現在、八十人余の里子たちが小学校へ通学している。向学心に燃え、かつ経済的に通学できない子供がメーンなので、目を輝かせて勉学に励んでいる。半数以上の里子はクラスでは上位の成績である。年に一度の成績表は翻訳し、里親の皆さんに郵送している。成長する里子を見て、さらにもう一人をと里子支援してくださる方もいる。 この制度は比較的少ない金銭での支援が可能なので、来年からラオスでも普及すべく準備中である。ボランティアは何かをしてあげるのではなく、何かをさせていただくとの謙虚な姿勢が大切。そして、アフターフォローが重要だ。放置された井戸、利用されていないトイレ等に遭遇すると、本当に必要な支援なのか疑問を感じることがある。 豊かさがどの程度か、世界の実情を知らない貧困といわれている人々は、現在の暮らしに満足はしていなくても、現実を当たり前のこととして受け入れ、笑顔を絶やさず日々生活している。メディアが発達していないこうした国々では、自国の治安、衛生状況、経済、政治等について知るよしもない。五歳未満の幼児の死亡率が先進国の数十倍の高率であることも知らない。先進国の誰かが指導し、改善しなければ、貧困からの脱出は困難である。 微力を承知で東南アジアの貧困にあえぐ人々に、国づくりの原点である教育支援に努力したいと思う。ボランティアはお金と時間がある人が行うものと吹聴されているが、時間は自分でコントロールしてつくり出す、お金は自らの努力で稼ぐ、熱意と情熱で善意の支援金を募る、現地に出向いて知識と労力を提供する―ものだと考える。皆さま方のご支援を期待したい。 (上毛新聞 2006年9月16日掲載) |