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◎身の回りから進めよう ケニア出身の女性環境保護活動家、ワンガリ・マータイさんはアフリカ大陸全土で植林活動を展開し、民主化や持続可能な開発の推進に取り組んできました。二〇〇四年には、環境分野の活動家としては史上初のノーベル平和賞を受賞しました。これは、アフリカ人女性としても史上初のことです。 また、日本語の「もったいない」という言葉を知って感銘を受け、「MOTTAINAI」の世界語でキャンペーンを実施している方といってもよいかと思います。彼女のおかげで「もったいない」という言葉が脚光を浴び、大変有名になりました。この話を聞いて、とてもうれしい気持ちになるとともに、外国から逆輸入のように入ってきた言葉だから、メディアで取り上げるのだなあと思うと、少し寂しい気もしました。 私は、今で言うこの「もったいない」に通じる質素倹約を奨励した江戸時代後期の農政家、二宮尊徳(金次郎)の精神を子供たちに、また機会があれば大人たちにも広めたいと思っています。特に教職を退いてからは、どこでも誰にでも話していきたい、と考えています。 そういう気持ちが通じたのか、まず最初に牛伏桃林大学(吉井町の牛伏山を拠点とした文化活動の場)、次に甘楽町新屋小学校の朝礼で全校児童、さらに富岡東高校で二、三年生、前橋市内の六十歳以上の方を対象とした明寿大学でと、これまで千人を超える方々に二宮尊徳の話を聞いていただきました。それは物を大切にすること、自分がもうけたり利益が上がったりしたら必ず、少しは社会に還元し、社会貢献をするということでした。 私自身の社会貢献は、いま仰せ付かっている区長代理という地域の役職を全うすることです。その中で、「もったいない」という言葉や質素倹約の精神を自ら理解して実践するとともに、地域の人たちにも広めていきたいと思っています。そのように考えると、区長代理と共にある職務、環境支部長の仕事はまさに環境に配慮した役どころであり、この新旧二つの精神に支えられているような気がします。 環境問題といえば、私の身の回りでは、自宅敷地内にある古い母屋の改築を考えました。今から十年ほど前、英国やアイルランド、イタリアを旅しました。その時、宿泊した旅館や買い物をした店の戸口にある「この家は一七二六年の建物です」などと書かれたプレートを感激して眺めた記憶があります。 そのことを思い出して、「この家は築二百年たっています」と孫やひ孫が自信を持って言えるようにすることが夢です。ちょうな削りの梁(はり)は曲がりを上手に組み合わせてあり、今の大工さんにはできないようです。一軒の家を壊せば、一軒分の産業廃棄物が出ます。昔の物を大切にし、先祖の心を大切することは質素倹約に通じると考え、改築を進めています。 私たちができる環境に配慮した生活は、それぞれ身の回りから進めていけば、今で言う「もったいない」の精神に通じ、人の心も豊かにするものと確信しています。 (上毛新聞 2006年9月10日掲載) |