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東京福祉大学教授 矢端 義直さん(前橋市若宮町)

【略歴】文部省社会教育局、総理府青少年対策本部、国立赤城青年の家、県教委、県立青少年教育施設などを経て、05年4月から現職。専門は生涯学習、社会教育。

定年後を豊かに

◎やりたいことを探そう

 「定年うつ」が話題となっている。

 最近の傾向として、定年退職だけでなく、役職を離れたり、早期退職後の転職先に適応できないことをきっかけにした「うつ」が増えている、という。特に、現役時代により責任ある立場にあった人や、仕事一筋であった人ほど落ち込みがひどいと聞く。

 仮に人生八十年とし、定年を六十歳と考えた場合、八十歳までの二十年間おおよそ十万時間(睡眠・食事を除く一日十四時間×三百六十五日×二十年)が誰にでも与えられた自由な時間と一般的に言われている。この貴重な時間を有効に活用し、豊かな生活を送りたいものだ。

 そこで定年後に陥りやすい「うつ」を回避し、心身ともに元気に生きるための「生涯学習」を考えてみたい。

 近年、団塊の世代を対象とした学習の場が多く提供されている。

 例えば、県立農林大学校では、定年帰農者向けに「農業実践学校」等を計画実施し、応募者が殺到している。県生涯学習センターでは、昨年度に引き続き「団塊シニア支援講座」等を計画し、好評を得ている。

 また、長寿社会づくり財団でも「サラリーマンOB地域デビュー講座」を開講している。

 専門的な学習を目指したい人に対して、県立高校の多くでは、社会人や高齢者を生徒として受け入れる「科目履修制度」を設けている。

 また、専門学校や大学等では、「社会人入学制度」や「科目履修制度」を設けており、その数も増加傾向にある。さまざまな分野にわたる通信講座も数多くあり、生涯学習の場にはこと欠かない。

 生涯学習センターや公民館、学校等へ足を運べば、思いがけない収穫があるはずだ。学びの場は志を同じにする者たちが出会い、新たなネットワークを築く場でもある。

 学習終了後、同好の仲間がその学習の成果などを基に活動を始めた例を挙げてみたい。

 シニア料理教室に参加して知り合った男性たちが「倶楽部(くらぶ)」を結成して、地域の一人暮らしの高齢者にお弁当を届ける給食サービスを始めた。お年寄りの元気な顔を確かめ、コミュニケーションを図りながらのサービスは、今では組織的な活動に発展しているという。

 一方、中高年を対象にした「音楽教室」等で学んだ仲間が、地域の文化祭に参加したり、福祉施設を訪問し「ありがとう」という一言に一層奮起するといった話を耳にする。

 定年後の人生を豊かなものにするためには、退職後の自分をイメージし、可能な限り、早い時期にやりたいことを探し出すことだろう。

 その学習も伴侶と共にできるものがあれば、より良いと思う。

 生涯学習の場は、主体的に求めていけば、かなり多くの情報を得ることができる。インターネット等も大いに活用したい。

 「うつ」を寄せ付けず、実りある心豊かな生活を求めて学習に挑戦していきたいものである。






(上毛新聞 2006年8月31日掲載)