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◎研究の空白域も発見 二○○四年の春、自宅の南側に隣接する土地に「生きている化石の植物園」を造った。二十年来の夢の実現である。 定年退職後の○二年、アイスランドの地質調査から帰国したとき、南側が更地になっていた。そこで、この土地の関係者に「植物園を造って無料で公開し、子供たちの学習の場にしたい」という事情をお話しして、土地を安く購入することができた。住所が三俣町であることにちなんで、三俣植物園とした。 園内の中央に東西方向の観察道を設け、入り口から奥に向かって、左側を見ながら時計回りに、古い順に観察できるようにした。まず、公道の歩道に面したところには、原生代のコレニア石灰岩を据えた。この石は、地球の歴史上初めて酸素をつくりだし、始生代末期(二十八億年前)から原生代末期(五億五千万年前)まで栄えたシアノバクテリアの働きで形成された。 入り口付近から奥に向かって、古生代のデボン紀(四億二千万年前)から石炭紀(二億九千万年前)まで栄えたヒカゲノカズラやシダ類、中生代(二億五千万―六千五百万年前)のソテツ、イチョウ、イチイ、中生代末期(九千万年前)から新生代新第三紀末(二百万年前)にかけて栄えたメタセコイア、ハクモクレンなどを植えた。また、通路の突き当たりから入り口に戻ってくる観察道の左側には、新生代(六千五百万年前以降)に栄えたエノキ、ヤマモモ、ヤマボウシ、クリ、ブナなどを植えた。最後はソメイヨシノである。全部で四十三種類になる。 旧石器時代の食事が味わえるように、できるだけ、実がなる木を植えた。 開園した年の夏、面白いことに気づいた。通路の北側に植えた新生代に栄えた植物にだけ虫がつき、通路の南側の中・古生代に栄えた木には、虫がつかないのである。これは昆虫の進化に関係しているなと思い、昆虫を研究している友人に「昆虫と植物の進化の相関関係を論じた本を紹介してくれ」とお願いしたところ、「そういう本はない」との返事だった。これは、三俣植物園を造ったからこその発見であり、研究の空白域だなと思った。 「生きている化石」とは、ある地質時代に栄えた生物がその後に衰え、現在まで、細々と生き延びている生物のことである。よく「生きた化石」といわれるが、それは誤りである。現在まで生き続けている、という点で現在進行形であり、「生きている」というのが正しい表現である。 三俣植物園には、いつ来ていただいても観察できるように、乗用車二台分の駐車場と案内書が用意されている。いずれも無料である。 (上毛新聞 2006年8月23日掲載) |