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◎食育は家族の絆を生む 「食育」という言葉を、小泉首相自らが発言するということは、極めて異例なことではないでしょうか。これは現状の食生活をかんがみ、将来の食に関する不安を示唆していると、私は理解しています。「食育」という言葉の裏には食料の問題があり、食料の自給率や安全性の確保など、国民の不安感を少しでも和らげようとする努力を垣間見た気がします。首相が言う「食育」という言葉がパフォーマンスで終わらないことを、国民の一人として願わずにはいられません。 また、県では「生きる力を育てる」をテーマに食文化の理解、継承、健康保持と増進、食料自給率の向上を目指しています。 最近はファストフードと称して、外食産業が盛んになり、いつでも、どこでも、簡単に食料が手に入る時代を迎え、家庭の食文化に変化が見られるようになりました。最近はスローフードという言葉が注目されていますが、われわれはこうした言葉に惑わされることなく、代々引き継がれてきた「医食同源」という言葉を根本に「食」を考えるべきだと思います。「医食同源」を私なりに理解すると、「旬」を味わうということだと思います。 例えば、根菜類は体を温める力があり、夏野菜は体を冷やす効果があるといわれています。現在は「旬」がなくなり、いつでも多種多様な食材が並んでいます。「食」を考えて求めるのではなく、視覚を中心に消費行動を起こしているように思われてなりません。売る側も品ぞろえが先行し、購買意欲を高める工夫は見られますが、「旬」を提供する面から考えると、残念ながら疑問を持たざるを得ません。 私たちの身の回りの食料事情を考えてもトレーサビリティー(食品の生産履歴を明らかにする制度)などに関心が集まります。これは食の環境変化に加え、食料事情の貧困を意味しているのかもしれません。わが家ではキュウリ、ナス、トマト、ピーマン、葉物など夏野菜は自給自足し、食卓を飾っています。 「食育」は食の問題だけではなく、野菜(植物)を育てることを学ぶことも含んだ意味だと考えています。自分で種をまき、育てることの大切さを知り、自然の恵みに感謝し、家族で食卓を囲む。この一連の作業が家族の絆(きずな)を生み、情操が豊かな子供が育つのだと思います。最近は「食」が多国籍化し、表示義務などの情報が多くなり、国民も関心を持ち始めたことは確かです。 「食」は生命や健康維持の源泉です。消費者自身が賢くなり、確かなものを求める力を持ちたいものです。「食」が家族団らんの場となり、「家庭」というコミュニティーに食を通して安らぎを覚える時間が必要な時代だと思います。これからは、ますます健康に関する情報量が増します。情報の活用は自分で考え、自分の責任で選択し、自分で「生きる力を育てる」ことが求められる時代だと思います。 (上毛新聞 2006年8月9日掲載) |