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◎貧困にあえぐ子供たち ラオスはベトナム、タイ、中国、カンボジア、ミャンマーに隣接し、経済的には貧しい国である。国連の資料によれば、世界の最後発国の一つといわれている。同資料の人間開発指数では世界百六十二カ国中、ラオスは百三十一位。日本九位、タイ六十六位、カンボジア百二十一位で、ラオスは東アジアでは最下位と記されている。川の多いラオスでは、水力発電によって人口五百六十六万人をまかなえる電力は十分にあるが、山岳地帯で暮らす人々に届ける送電線を設置する費用がない。 余剰電力は隣国のタイやベトナムに販売し、貴重な政府の収入源となっている。従って、公共の電気を利用している人口割合は35%程度とのこと。国民の半数は電気も水道もない状態で生活している。農業生産性の低い山岳部が多いこの国では、自活する程度の食料生産がやっとといわれている。地方では電話回線もない。連絡方法は自分の足かバイクが頼りである。 今回は、あえて農村地帯の小学校を訪問した。山岳部の多いラオスでは珍しく、平たん地に集落等があった。ブタ、ウシ、ニワトリ、イヌ、アヒル等が放し飼いされている。政府教育省から事前に連絡が届いていたのか、村長、校長など多数の村民が出迎えてくれた。 当方は学校の施設、教科書、教材等の充足状況の調査に出向いたのであるが、いきなり村長の家に招待され、なにやら怪しげなセレモニーが始まった。ラオ族特有のきらびやかな一メートル程度の円形のテーブルが設置され、シャモの蒸し焼き、ナマズのような魚の蒸し焼きなどが飾られていた。問題は飾られた料理から発する強烈な異臭である。 長老が呪文(じゅもん)を唱えた後、想像していた通り、ハエにまみれた料理とおにぎりが汚れた手で配られた。ラオス人のドライバーとガイドはおいしそうに食べていたが、日本人には到底食べられる代物ではない。日本人の食生活にはこのような習慣のないことを身ぶり手ぶりで伝え、やっとの思いで断ることができた。昼食抜きの一日となった。 その後、案内された小学校は粗末な掘っ立て小屋で、古びたいす、机、黒板があるだけ。四十―五十人くらいの子供たちが、古びた板にチョークのようなもので先生が書いた黒板の文字を懸命に書き写していた。ラオス政府は貧困撲滅のトップに教育を取り上げているが、実情は日本の戦前よりはるかに悪い。十歳を超えた子供たちは誘拐されたり、生活のために親が外国人に売り渡すこともあるという。 農村地の人々の月収は、約十万キップ=千円(首都ビエンチャンは二千―三千円程度)であり、とても教材を買う余力はない。教育支援の必要性は十分に理解できたが、南北千キロに及ぶラオスの道路網、航空網は未整備で、移動に多々問題がある。貧困にあえぐ子供たちの教育支援の方法について、もう少し調査してみたい。 (上毛新聞 2006年8月7日掲載) |