視点 オピニオン21
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サポートハウスなずな理事長 福島 知津子さん(渋川市祖母島)

【略歴】立正大、仏教大卒。精神保健ボランティア活動を通じて障害者と出会い、NPO法人サポートハウスなずな設立。障害者の地域での生活をサポートしている。


障害者の就労

◎楽しく、続けられるか

 愛犬「海人」との早朝散歩は、楽しい一日の始まりである。日に日に変化する田畑の作物たちに元気をもらっている。夕闇の中の散歩もまた、重い心の荷物を降ろしてくれる大切な時間である。

 さて、作業所は人数が増えたことで、一層にぎやかになった。四月の初め、一人一人から将来の希望と目標を聞き取ってみた。就労希望が十一人、就労を希望しないで作業所で仲間と活動したいというメンバーが七人、未定が四人だった。在宅や入院中のメンバーの希望も、訪問を重ねて聞き取っていこうと思っている。大半は就労希望だが、一人一人に合った就労先は見つからないのが現実である。

 就労するということは、相手先の要求する作業に応じる力を持たねばならない。当たり前のことだが、その要求にどう応じ、どう耐えて作業に慣れていくか。一緒に仕事をする人たちと、どうつながれるか、欲をいうと、その仕事が楽しくできて続けられるかである。

 五月下旬に会社実習の機会を得たので、受けるかどうか、メンバーたちに聞いてみた。希望者は一人で、就労のチャンスと思って意欲的に取り組んだが、結果は否だった。就労経験のある仲間から「朝から立ちっ放しだし、昼休みだけ座ることができてさ…。つらいけど、とにかく頑張って!」とエールを送られていたのだが…。

 結果は本人が受け止めて、就労に欠けた部分を作業所で補えばいいと思うが、その部分を本人が気付く(理解する)まであきらめない努力と、職員の努力が必要である。

 作業所は、さまざまな障害を抱えながらメンバーが寄り添って四年が経過した。障害があるということは、不自由なだけでなく、目に見えない苦労がある。手のかからない人のみを対象とする分野ではないことを知っていただきたいと思う。同時に、人を選んではいけない分野でもあると思っている。日々あきらめずに援助が続いているのだが、自立支援法のスタートとともに、作業所の在り方も変わろうとしている。

 就労を目指す場とするか、就労しないで活動する場とするか。どちらの方向に向くかだが、とにかく現在通所しているメンバー一人一人をすき間からこぼれ落ちないようにしなければ、と思っている。彼らは頑張れるときもあれば、頑張れないときもある。就職しても長続きせず、その間に心も体もぼろぼろになることだってある。就労という到達点になかなか届かないので集まっている。だから作業所がある。たくさんのメンバーが障害を乗り越え、能力も差別なく集まっている。

 毎日、作業をしているが、収益の上がる作業が切れ目なくあるわけではない。でも、一人一人が生き生きと取り組んでいる。自主生産・自主販売のアイデアもときには思いめぐるのだが、少人数の参加しかできそうにない。外から見ると、でこぼこなことをしているように見える作業所である。でも、障害とはでこぼこなものであり、その障害を受け止める作業所も多分野にわたって、広がりのある場であっていいのではないか、と思っている。






(上毛新聞 2006年8月4日掲載)