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◎保管施設を一日も早く 平成の市町村大合併がほぼ一段落し、地域も変わり、各地で新しい動きが見られる。 しかし、心配なことがある。合併以前の市町村や地域で持っていた過去のデータや資料のことである。万一、大量に処分されたものがあったとすれば、大変である。 平成十四年には、総務省から「市町村合併時における公文書等の保存について」という通達が全国の市町村へ出されている。また、公文書館法は、国や地方公共団体は歴史資料として重要な公文書などの保存や利用について、適切な措置を講ずる責務がある―と規定している。 国や自治体や地域の記録は、その歩みを示す歴史そのものである。かけがえのないデータであり、貴重な財産である。きちんと規定をつくって、保存・活用していかなければならない。 地域で生まれ育った子供たちに、地域の歴史を伝え、ふるさとを愛する心を育てるのに、これらの歴史データや資料は十分役立つものと思う。 効率優先や目先のことばかり追わないで、長い目でしっかりしたものを育てていくのが、現在、生きているわれわれの責任である。 歴史は未来を解く鍵であり、将来の展望を切り開く羅針盤である。過去のデータをよく調べることによって、明るい未来を切り開く鍵がいくつも見つかるのである。その意味で過去のデータをよく保存し、活用することは、大切なことである。 しかし、平成の大合併は、こうした保存や活用について十分配慮したであろうか。長びく不況に対処するため、緊縮財政が強いられ、経済や効率が優先されたのである。 そのため、貴重な資料やデータは、空調設備も整っていないような所に箱積みされたまま置かれ、すぐには活用できないものもある。かけがえのない価値を持つものが、このような状態になっていて良いのであろうか。 先進国では、公文書館は博物館や図書館と並ぶ文化の顔であり、文化程度を示す三本柱となっている。日本の国立公文書館の職員数は、アメリカやイギリスはもちろんのこと、中国や韓国よりはるかに少ないということである。これでは、日本が先進国であるといえるであろうか。恥ずかしい限りである。 福田康夫元官房長官を中心に、議員懇談会が発足し、各省庁の重要な公文書を集中管理する中間書庫を創設する報告書がつくられ、議員立法で提案しようとする動きがある。 また、藤岡市が新井利明市長の指導で、国立公文書館の中間書庫を誘致する動きを見せているのは心強い。歴史的データの保存について、一筋の光が差し込んだような気がする。 国も自治体も地域も一緒になって、未来を切り開く宝である歴史的データを、きちんと保管し、多くの人が活用できるような施設を一日も早くつくっていかねばならない。 明治の大合併や昭和の大合併で失われたものは非常に多い。三度もその轍(てつ)を踏んではならないと思う。 (上毛新聞 2006年7月30日掲載) |