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◎市広報で詳しく紹介を 富岡市では夕方の六時に行政防災無線から流す童謡のメロディーを、今月一日から郷土の生んだ童謡詩人、橋本暮村の作詞した「土つく筆しを摘んで」に変えた。以前は「夕焼け小焼け」(旧富岡市)、「ふるさと」(旧妙義町)であったから、なじみのない「土筆を摘んで」に違和感を覚える人も多く、市民の意見は賛否両論のようである。だが、私はこの変更には拍手を送りたい。 今月二日、かぶら文化ホ―ルで第十九回「かぶらの里童謡祭」が開かれた。富岡市、同市教育委員会、同市文化協会の主催で地元の子供たちや合唱団など約六百人が出演、「かたつむり」「もみじ」などの童謡を熱唱した。この童謡祭は橋本暮村の顕彰と、新しい童謡詩人、作曲者の発掘と育成が目的で、平成四年からは毎年、童謡の詩と曲を交互に全国から募集している。すでに「ちょうちょになって」など八曲の童謡が富岡の地から誕生し、この童謡祭や学校などで歌われ、親しまれている。 こうした催しは全国でもまれで、しかも十九回と会を重ねた実績は、市民の一人として大いに誇りたい。そして、童謡祭を発案しスタ―トさせた先輩諸氏、また共鳴して継続してこられた関係者の皆さんに、心から敬意を表したい。 今回の行政防災無線から流れる童謡の変更は、こうした童謡祭の目的と実績に深くかかわっているものと思われる。「土筆を摘んで」が市民の心に染みわたったら、次は募集して生まれた童謡を順次紹介してほしい。郷土から生まれた童謡を採用した行政防災無線のチャイム。画期的なことだ。おそらく全国でも富岡市だけだろう。これこそが市民憲章の「文化の香り高いまちにしましょう」の実践で、私たちの望んでいる文化行政でもある。 橋本暮村の「土筆を摘んで」を紹介すると―。 一、里の子供は 野良の子は 土筆を摘んで おてならい いろはにほへと 春が来る 二、土筆の筆で 禿ちび筆ふでで 田んぼの砂に おてならい いろはにほへと 花が咲く 三、里の子供は 土の子は 土筆を摘んで おてならい ほろろん ろんろん 鳥が啼なく 橋本暮村は富岡市星田に生まれ、群馬師範学校に学び、教職の傍ら童謡作詞を志した。昭和初期の新童謡運動に加わり、田園調の叙情性豊かな作品を発表したが、二十六歳で早世した。「土筆を摘んで」は本居長世の作曲でレコ―ド化され、全国で愛唱された。だが、古里・富岡で暮村を知る人は少ない。 そこで提言したい。市の広報を活用し、歌詞と暮村を詳しく紹介してほしい。暮村を理解すれば、なじめないで異を唱えている人も、必ず耳を傾けてくれるだろう。それが童謡祭の発展と、暮村に続く新人の発掘に必ずつながると思う。 (上毛新聞 2006年7月29日掲載) |