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県立尾瀬高校自然環境科主任教諭 松井 孝夫さん(沼田市善桂寺町)

【略歴】92年千葉大卒。西邑楽高を経て、97年尾瀬高教諭となり、翌年から現職。同校理科部顧問。ぐんま環境教育ネットワーク代表理事。


夏休みの体験活動

◎参加して新たな一歩を

 「学校が楽しくありません」。ホームページの掲示板に、こんな書き込みがあった。

 楽しくない原因は何だろうか、といろいろ推測してみる。勉強や部活動、人間関係などで思うようにならないのだろうか。または無目的で、無気力で、退屈な日々を繰り返しているのだろうか。

 あのような言葉がこの先、「仕事が楽しくありません」「生活が、人生が楽しくありません」などと続いていくと想像すると、「何とかしてあげたい」と思わずにいられない。

 一方、毎日が充実している人は、どんな気持ちなのだろう。大学へ進学し、「勉強、研究、バイトのすべてをこなすのは大変。でも、どれもやりがいがあるので頑張りたい」とメールで報告してくれたのは「毎日忙しいが、とても充実している」と高校時代から言っていた生徒だ。就職して充実している現状を報告してくれるのも、やはり「忙しい高校時代」を送っていた生徒である。

 彼らはどのような高校時代を過ごしていただろう。勉強や部活動はもちろん頑張っていた。そしてさらに、プラスアルファの活動をしていた。生徒会行事での実行委員、さまざまな分野でのボランティア活動、大学教授らの特別講義の受講等々。自分のスケジュール帳とにらめっこしながらの毎日だった。

 いずれの活動も、誰にでも平等にチャンスがあることである。そのチャンスをものにするかどうかは、本人の気持ち次第である。

 夏休みには、学校や地域、全国各地でさまざまな体験活動が用意されている。勉強や部活動が中心の普段の生活では体験できない魅力的な活動も少なくない。勇気を持って一歩踏み出し、多くの体験をしてほしい。

 また、これらの体験は、ただ毎日を充実させてくれるだけではない。「人生を生きる力」を与えてくれる。その人に必要な「生きる力」はそれぞれ異なるが、さまざまな活動の中にあるその人なりの新しい体験や新しい出会いが、自分に力を与えてくれることを実感させてくれるはずである。また、社会が必要としている「コミュニケーション力」「問題を発見する力」「状況の変化に柔軟に対応する力」「自己表現力」などの新しい力も、通常の学校生活以上に身に付くはずである。

 こうしたことは、なにも若者だけに言えることではない。私自身もそうであるが、大人だからといって現代社会に必要とされる力が十分にあるとは言えない。そして、それは補う必要性もあるし、若者とともに活動する中で自分にも身に付くと実感することも多々ある。

 新しい世界に踏み込むことは、大人でも勇気のいることである。一人でちゅうちょしているのではなく、友達を誘って、また兄弟や親子で一緒に参加することで、新たな一歩を踏み出してほしい。






(上毛新聞 2006年7月27日掲載)