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◎販売力の向上へ知恵を 榛名町は、広大な関東平野と山岳部を結ぶ中山間地です。町の中心を東西に烏川が流れ、川を挟んで肥沃(ひよく)な土地が広がっているために、農業は町の基幹産業となっています。特にウメの生産は養蚕の衰退以降、桑畑の代替作物として推奨され、作付面積は四百ヘクタール以上、生産量は三千トン以上と、東日本一の規模を誇っています。 季節の移り変わりとともに、梅林は色彩を変えていきます。早春、それまで暗色だった梅林は花の時季を迎え、暖色系の白で覆われ、町中の景観まで変えてしまいます。やがて新緑から濃い緑色へと変わり、枝々に、青ウメをたわわにつけていきます。 青ウメの収穫期を迎え、カメラを持って取材させていただきました。腰に布袋をつけ、脚立に上り、一粒ずつ手でもいでいました。プラスチックのケースに詰め、軽トラックの荷台に運んでいきます。 農協の選果場の受付では、荷台にウメの実を満載した軽トラックがずらりと並び、次々と搬入していきます。数台のフォークリフトも忙しそうに走り回っていました。 大きな選果機もフル稼働し、品種や等級別に箱詰めされたウメが、運送会社の大型トラックに運び込まれ、出荷されていきます。 軽トラックが活躍する場面の多さと、台数の多さにはびっくりさせられましたが、最も印象深かったのは、それぞれの場面で働いている皆さんの表情でした。肉体的には決して楽な作業ではないはずなのに、活力に満ち、明るく、生き生きした表情で作業している姿を見せてくれたからです。 しかし現在、ウメを取り巻く環境は大変厳しく、一大生産地であることの認知度も低く、価格は低迷しています。生産、出荷の場面で見せてくれた、あの明るい表情も、入金通帳を見ると眉間(みけん)にしわが寄ってきます。 今年も町内では、何カ所もの場所でホタルが舞っていました。きれいで、おいしい水が豊富にあり、肥沃な土地があり、日照にも恵まれていて、大消費地の首都圏にも近い、というメリットが必ずしも十分には生かしきれていないように感じられます。 ウメの後には、プラム、モモ、ブルーベリー、ナシ等の果樹や、米、シイタケ、花木、野菜の生産出荷が続いていきます。 どの場面においても、生産力と比べて販売力の弱さが目立ってしまいます。農産加工品の開発やブランド力の向上、広告宣伝や情報の収集力、発信力の強化、観光資源の積極的活用、グリーンツーリズムの推進等、販売力強化への切り口はたくさんあると思います。 農業は環境保全の役割も含め、人間生活の大切な基盤です。あの活力ある明るい表情を、次世代につなげていくためにも、販売力の向上にもっと力と知恵を注ぎ込んでほしいと思います。 (上毛新聞 2006年7月21日掲載) |