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◎子供は地域で育てよう 集団生活になじめない、自己抑制力がない、協調性に欠ける等、子供の社会性の未熟さが各方面から指摘されている。また、近年の度重なる凶悪犯罪やいじめ、不登校等さまざまな問題も増加しており、地域や家庭の教育力の向上が急務となっている。 そこで、私が数年前に、当初の企画にかかわった取り組みを紹介したい。 それは、県立妙義少年自然の家に宿泊しながら登校するという妙義小学校の三年生から六年生を対象に行う「通学合宿」である。 事業のねらいの一つは、物質的な豊かさや便利さの中で親に依存して暮らす子供たちが、学年の枠を超えて共同生活をしながら、日常生活上の体験や遊びを通じて、社会性を身につけ、たくましく自立していくことである。 もう一つは、「子供は地域で育てる」という合意の下、保護者や地域の人々、団体等が参加・協力し、子供への理解を深め、地域の人間関係を密にし、教育力を高めることである。 事業の特徴は、保護者、地元教育委員会、学校、少年自然の家の代表で組織した実行委員会が主催者となり、実際の運営や指導は保護者や地域の団体が担当、学校の先生方や施設の職員は後方支援に徹したことである。 協力団体は、度重なる学習会や打ち合わせを行い、次の通り役割を担うこととなった。 就寝準備から起床までの指導を保護者および民生児童委員が担当、読み聞かせの会「いとでんわ」は就寝前の読み聞かせ、敬老会「福寿会」は地域の昔話や会食による交流と下校時の同伴、子ども育成会は登校時の危険個所での交通指導、松井田VYS(有志青年社会事業家)はキャンドルファイアーやレクリエーション活動、妙義少年自然の家ボランティア「妙義アウトドアスタッフ」は班別活動を中心に事業全般を担った。 なお、現職の看護師に加え、保護者の中の有資格者が健康管理に当たるなど、ボランティアによる多くの団体・関係者の協力を得た。 また、子供たちの就寝後の大人同士による情報交換の場は、人間関係をより深めるとともに、地域や子供を考える最高の機会となったことは言うまでもない。 事業終了後は、おじちゃんやおばちゃんが「○○ちゃん元気かい」と呼びかけ、それに元気に答える子供たちの姿が多く見られるという。 このような事業は、必ずしも特別な施設が必要というわけではなく、食事が作れる簡単な設備があれば可能であり、風呂や布団の問題等も知恵を絞れば解決できることである。公民館や集会所、社会福祉施設、学校の余裕教室等身近な施設の活用も考えられる。 いずれの学校区にも、青少年の健全育成等にかかわる団体や子供のためならば協力を惜しまないという人がたくさんいる。「通学合宿」のような事業を通じて築かれた人間的なつながりは、地域や家庭の教育力向上のための大きな原動力となっていくに違いない。 (上毛新聞 2006年7月9日掲載) |