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◎広めたい豊かな暮らし 暮らしを「技」で支える人たちがいる。何げない日々の中で、食器やテーブル、時に小さな花束などが私たちの暮らしのシーンを豊かにさせる一瞬がある。映画の一場面やブランドにあこがれた時代をくぐり抜け、いま私たちは毎日の暮らしの中に「ゆっくりとした満足」を求め始めたのではないだろうか。 四年前、そんな空気を感じて群馬を舞台に一つのグループが結成された。「功く楽ら志し 群馬ユニット」。それぞれ異なる活動をしてきた作家七人が、互いの持ち味に共感して「豊かな暮らしの具体例を提示しよう」と集まった。 群馬ユニットのテーマは一つ。陶芸展や家具展示など、それまでの個々の発信では伝えきれなかった豊かな暮らし全体像を「技の融合」によって表現したい、ということだった。 例えば、太い梁はりが掛かるしっくい塗りの本物の家、クルミ板を丁寧に仕上げた居間の食卓には、摘んできたばかりの野花が素朴ながら味わいのある一輪挿しに生けてある。そして、その背後には低い軒がつくり出した涼しそうな縁側が家族の息抜き時間を待っている…といったシーンの提案だ。 メンバーは陶芸家、フローリスト、木工作家、瓦屋、タイル作家、棟とう梁りょう、建築家の七人。一人一技、その分野で卓越した技能の持ち主たちが、生活に直結したモノづくりを通じて共鳴し合い、一つのハーモニーをつくり出す。そんなありそうでないユニットが、出身地こそ違えども同じ時期、偶然にも群馬を拠点に活動する。 これまでの活動の一端を紹介しよう。一つは二年前、高崎シティギャラリーで催した「手技の握手展」。広さ八十坪の会場を一軒の家の敷地ととらえ、中央に一カ月後に市内に建ち上げる実物大の家の構造体を置いた。展示物はすべて触っても座っても持ち上げても構わない。生活と同じ感覚で楽しんでもらうことが何よりの目的だ。 柱で囲まれた家の中は「迎える、集う、食す、守る」などをキーワードに、七人の手技が融合して七つの場面を演出。瓦ぶきの実演を含め六百人を超える来場者の大半が滞在一時間以上、「仮想のわが家」を楽しんでくれた。 次なる催しは七人が持つ技を実際に体験してもらおうという試み。会場は「手技の握手展」で高崎シティギャラリーに仮設した家の現物。七人の技と思いが結集して完成した。建て主の協力を得て、花の生け方や狭い空間での家具選びなど十五の教室が開かれ、さながら家中は大人の文化祭。四十二坪の家全体を使って、その道のプロが「暮らしの味わい術」を披露した。 群馬ユニットの活動は発表だけにとどまらず、実際の家づくりや診療空間の演出などにも広がっている。平時はそれぞれの本業に精を出す七人だが、これからもユニットならでは、そして風土豊かな暮らし(功楽志)の魅力を広める活動を続けていきたい。 (上毛新聞 2006年7月6日掲載) |