視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎多様な生物が生息可能 農業を取り巻く環境も時代とともに変化し、あるべき自然の姿がいつの間にか変わったことに、あらためて考えさせられます。農村風景は見た目には大きな変化はないのですが、かつては自然の循環をうまく取り込み、多面的な機能を有効に活用していました。しかし、最近は利便性が優先され、農業を取り巻く環境も変化が見られるようになってきました。 そんな中で、自然に関心を持つ人や循環型社会に興味を示す人、自然科学に造詣の深い人たちが自然発生的に集まり、できるだけ自然に負荷をかけない生活ができないだろうか、と試行錯誤を繰り返しながら、実践している人の輪が広がってきました。 そんな思いから里山やわき水を大切にし、残っている自然を守り育てたいと考える人が三十人余り集まり、平成十六年八月、NPO(民間非営利団体)法人「清流の会」を設立し、以後、その趣旨に賛同する人が入会し、現在は四十二人を数えるまでになりました。清流の会では「里山の保全」「地域生態系の保存」「ホタル生息地の保全」「炭焼き体験」「自然観察会」などの事業目標を立て、会員が知恵を出し合って、少しずつ成果を挙げているところです。 活動の一環として、「森や林まの会」事務局長の宮下正次さんを講師に招き、「炭は命をも救う」と題した公開講座を開催しました。宮下さんは「炭の持つ効能の深さ」を広く地域の人々に説き、「日々の生活や営農活動などで長い間、人間が酷使したことにより自然が病み、悲鳴を上げている。今後の社会活動の中で自然を意識した活動を心掛けないと、今の豊かさを享受すること自体が難しくなる。改善するには、炭の持つパワーを再認識する必要がある」と訴え、松枯れ病を炭の力で治した事例や、酸性雨により土壌の酸性化がもたらす「白骨化現象」など幾つかの事例を示し、分かりやすく話をしてくれました。 清流の会では「人間の命を担保してくれる自然の大切さを県民が共有できないか」と会員で話し合い、休耕田に水を張ることにより「多様な生物の生息が可能になる」という実体験から、県内各地に点在する休耕田に水を張る運動を起こそうという案が提案されました。 「休耕田に水を張るべえ運動」と銘打って各地域で休耕田に水を張り、山間地や平地での変化の違いを県レベルで観察することは、意義深いものがあると考えています。活用はビオトープとして子供たちの学習の場に、NPOやボランティア活動の場、そして、コミュニケーションの場として老若男女が集う環境が整えば、地域に厚みが増し、特色あるコミュニティーが形成されると信じています。 全県下で同じ目的で同じ活動を行い、自然がどのように変化していくかを見守ることができたら、地域や県民の大きな財産になるのではないか、と考えます。多くの人が共働し、多様な知恵の集まる所が「安心」を実感できる地域になるのではないでしょうか。県の指導、各自治体の協力と理解を得ながら、この事業が動き出すことを願うものであります。 (上毛新聞 2006年6月23日掲載) |