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◎ボランティアで活用を 善意の支援に支えられて、カンボジアは極貧の地、コンポントム州に研修宿泊施設が完成した。施設は九×十五メートルの平屋建てで、十人の宿泊が可能である。貧村である現地の一般住居との格差を少なくするため、冷房設備はないが、豊かな日本で暮らすわれわれでも生活に支障のない程度の設備は整っている。この施設に隣接して、今年の一月に寄贈した日本語・カンボジア語友好学校がある。 ここでは、経済的に通学できない約二百四十人の小学生らが午前、午後の二部制でクメール語の読み書き、算数などを学んでいる。夜は午後六時、七時の各一時間単位で約百二十人の生徒たち(小中高生、社会人、お坊さんら)が日本語を学んでいる。ここの日本語教師のレベルはかなり低く、指導に問題がある。生徒たちは学んだ日本語を使って、日本人との会話を望んでいる。 この施設は、貧村の地でボランティアを志す方々の活動拠点、体験学習の場となる。宿泊を目的としていて、施設の利用は食費、電気、ガス代の実費のみでよい。世界に羽ばたく人材育成を目指して、昨年七月に開塾した「ぐんま未来塾」(塾長・小寺弘之知事)の塾生たちのカリキュラムの一部に取り入れていただけないかと、内山征洋県教育長に相談中である。 実現すれば、西欧文明に目を向けがちな塾生たちに、日本人のルーツといわれている東南アジアの貧村の地で、子供たちと接し、共に勉強することでお互いの辛苦を分かち合い、理解を深め、心身の鍛錬、育成が図れると考える。貧困にあえいでいても笑顔を絶やさず、勉強に励む姿に接すれば、我慢、忍耐、コミュニケーションの大切さを実感でき、自身が困難な事案に遭遇したとき、キレる、荒れる、落ちこぼれることなく、自力で解決する力を身に付けられると思う。 ボランティアを志す方々には、ぜひ、貧村の地コンポントム州を訪問いただき、現地でのボランティア活動を、そして学習の手助けとして、日本語学校で勉学に励む現地の生徒たちに正しい日本語の指導と、学んだ日本語を試したい生徒の相手もしてほしい。近くには中高一貫の学校がある。校舎や教材は誠に乏しいが、二部授業で約二千二百人の生徒たちが学んでいる。中でも英語教育のレベルは高い。会話力においては、日本の高校生より高いかもしれない。ここでの体験留学も貴重なものと考える。 カンボジアへのODA(政府開発援助)が世界一の日本への関心も高い。日本の学校では体験できない貴重な人生の一ページを築けるかと思う。実現した暁には、体験したことを日本の若い世代の方々に広め、日本人がいかに恵まれた環境の中で生活し、勉強しているかも知らせてほしい。貧困の国では不登校などはあり得ない。勉学できることを皆が望んでいるが、経済的に通学できない子供が大勢いるのが実態である。 子供たちは国のため、そして自身の知識向上のために勉強できることを夢見ている。ボランティアを志す方々には、研修宿泊施設の活用を期待している。 (上毛新聞 2006年6月17日掲載) |