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◎縁を発展させ心を養う いま、あらためて振り返ってみると、人との出会いがなければ自分の人生はなかっただろう。そして、これからも人との出会いがなければ、これからの自分はないだろう。人との出会いで人生が変わり、人との出会いで人生が広がる。人の縁が夢を現実にし、人の応援を得られれば夢が実現できる。人の出会い、人のつながりは重要である。 現代は多くの問題を抱えているが、その一つは人の出会いや人のつながりが少ないことだろう。地球上の人口は今や六十五億人になったという。人生の中で出会うことのできる人は、ほんの一握りで、そう考えると人の出会いは運命的でさえある。人の出会いは宝であり、大切にしたい。 人の出会いを語るのに「一期一会」と「縁尋機妙(えんじんきみょう)」という言葉がある。「一期一会」とは、茶会は毎回一生に一度という思いを込めて主客と誠心誠意、真剣に行うことを説く茶道の精神からきた語である。転じて一生に一度しかない出会い、一生に一度かぎりであることを意味する。 また「縁尋機妙」とは、東洋哲学者の安岡正篤さんがしばしば使われた言葉で、良い縁がさらに良い縁を尋ねていく、実に機妙ではないかという造化の妙を表したもの。もっと現代的に言えば、「真の出会いが良い出会いを広げていく」という意味。縁を大切にしていけば素晴らしい人物とも知り合うことができ、しかも、そうした人物には必ずまた素晴らしい人物がついている、従って一人を知れば次々によい人と知り合うことができるという意味である。人の出会いの大切さと、自分もよい人になれば周りに素晴らしい人が集まる、そんな人物に成長するよう教えている。 このように人の出会いは、「一+一=二」ではない。「一+一」が四にも六にもなる。その人の人脈を通じて自分の世界が広がっていくからだ。そのことを公私ともに実感している。ビジネスの世界でもかけがえのない大切な人がいるが、わが家族を見てもボビー・バレンタイン氏(千葉ロッテマリーンズ監督)と出会い、その縁で「このまま君だけを奪い去りたい」などの曲で有名なアーティスト、DEENとの知己を得、さらにハワイの新進アーティストの日本への橋渡しと、縁は広がった。 出会いは人に喜びを与える。人に喜びを与えることは人生の喜びだ。喜びは分けると増え、悲しみは分けると減る、と言われる。物も与えれば減るが、喜びは与えると大きくなり、自分にも返ってくる。人の出会いもこれに似ている。 また、出会いはその人から何かを学ぶ。どういう人と会って、どのように考え方を発展できたかも大切だ。人生でいろいろ苦労するが、苦労するのはその対応能力が不十分なためで、原因は自分自身にある。「自分だけがこんなに苦労している」と八つ当たりしても始まらない。できないことも協力を得たらできる、これが人間関係である。何事も他人のせいにしていては、スケールの小さなつまらない人間で終わってしまう。謙虚に人に学びたい。出会いを大切にし、よい人と交わり、よい縁をさらに発展させ、心を養う―そんな学びを心掛けたいものである。 (上毛新聞 2006年6月11日掲載) |