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館林市教委学校教育課長 青木 雅夫さん(館林市松沼町)

【略歴】群馬大教育学部卒、兵庫教育大大学院修士課程修了。県自然環境調査研究会会員。前兵庫上越教育研究会長、前館林第十小学校長。


外来生物の飼育や栽培

◎処理を怠らないように

 この間、市内を流れる川の脇を歩いていたら、川面に白いものが三つ浮かんで流れているのを見つけた。よく見たら、生まれたばかりのイヌの赤ん坊であった。全く動いていなかったのでおそらく、上流のどこかでこれ以上は飼いきれないということで、生まれたばかりのイヌを川に流したのだろうと想像した。恐ろしい光景である。悪臭のする水の中を音もなく下流へと流れていった。外来生物法の背景には、生物を扱う人々の不注意やモラルがもっと問題視されてよいと思っている。

 有害物質を垂れ流しした時代と同じように、外来生物の無秩序な導入は国民の健康被害を起こす危険性をはらんでいる。現に花粉アレルギーを一年中患っている人は、その一部の被害者であろうと思う。外来生物法の対象種ではないが、ミシシッピアカミミガメのように、小さいうちにかわいいと飼われ、大きくなると邪魔になって捨てられる。ペットとして飼われていた犬や猫も平気で捨てられている。法で規制されなければ、何でもわがままがまかり通る世の中になってしまった。むしろその方に危険を感じる。

 外来生物法で指定された動物や植物の中には、ペットとして、あるいは趣味の園芸として、外国から持ち込んだものもある。それが何らかの都合で放棄され、日本の自然界に適応して自生していったものもあろう。それはまた、氷山の一角であることを認識する必要がある。私たちはこうして、その環境の変化に気付かないまま、知らず知らずに外来生物の侵入を許し、環境汚染、遺伝子汚染、あるいはアレルギー疾患の増大による健康被害に遭っているのではないだろうか。

 動物であれば、毒があるとか、かみつかれるとか、田畑を荒らされるとか、直接的な目に見える被害が認識されやすい。しかし、帰化植物による被害はなかなか認識されにくいのではないだろうか。帰化植物の侵入には風、水、昆虫(動物)などのほか、人の手によって分布を手助けされている例が多くある。

 緑化による導入が最たるものだが、最近急速にその分布域を広げているナガミヒナゲシは、国道やそのバイパス沿い、県道や市道、路地裏にまで、当地方で急速に分布を広げている植物である。ナガミヒナゲシは地中海地方原産で、道端に咲く四枚の朱赤色の花弁が目立つ。美しいから選択的に除草されずに残る。アカバナユウゲショウもあちこちで目立つようになった。今回指定種のオオキンケイギクもまたしかりである。

 シカやイノシシではないが、自然界では一種類の生物が多様な環境をいとわず、多量に増え続けることは異常なことではないだろうか。人間の社会も一つの意見が強引にまかり通ったり、多様性が失われてきているのは、過去の歴史からして危険なことである。目立つオオキンケイギクやナガミヒナゲシのようなものが選択的に残され、その勢力拡大を図っているのは危険であると認識し、特に飼育や栽培する外来生物には廃棄する最後まで処理を怠らないようにしたいものだ。








(上毛新聞 2006年6月6日掲載)