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弁理士・羽鳥国際特許商標事務所長 羽鳥  亘さん(前橋市北代田町)

【略歴】成蹊大法卒。旧東京三洋電機特許部を経て87年独立。県知的財産戦略会議委員、日本弁理士会小中高支援チームリーダー、県高等学校PTA連合会長も務める。


プレゼンテーション

◎教育の世界でも多用を

 四月から群馬工業高等専門学校の非常勤講師として、機械工学科五年生に「知的財産権概論」を教えています。

 先日、この授業の導入講義として「ある発明をして特許権を取得した後に、他人が類似製品の販売を始めたらどうなる?」というタイトルで、学生に発明者役、類似製品販売者役になってもらい、寸劇(せりふが書かれた台本を使用)形式で授業を行いました。また、この授業では、パソコンのプレゼンテーション画面を使用して特許出願から登録までの手続きや、侵害事件の争点について、弁理士としての専門的見地から解説も行いました。

 同内容の授業は昨年度、渋川工業高校、前橋工業高校においても「知的財産学習講座」として行いましたが、いずれの授業においても生徒の関心は高く、大好評でした。

 このうち、前橋工業高校機械科二年生O君の受講後の感想文には「寸劇は、最初の方は難しいことを言っていたけれど、映像を使って分かりやすく説明してもらってよかった。後半では笑えるところもあって、面白く見ることができた。特許のことはあまり聞く機会がないので、今回、話が聞けてよかった」とありました。また、同校のS君は「今日の講習はとても楽しかった。今までの講習は堅苦しい感じがして、聞いていても面白くなかった。今回の知的財産権の学習講座は講師の先生の説明も分かりやすく、今までと違って楽しかった」と書かれていました。

 身近な商品を題材にし「寸劇」という新しい形式を取り入れ、かつ、パソコンのプレゼンテーション画面を併用する授業方式が、生徒たちに斬新な印象を与えたようです。

 また、身近な商品から見た特許についての授業では、「カップ麺めん」内部構造特許の説明をする際、生徒の目の前でカップ麺容器を実際にカッターで切って、容器内の麺下部に空洞部分が設けられている特許構造を解説しましたが、このような実演も、生徒たちの興味を大いに引くようです。

 企業社会における講演会や各種会議においては、参加者に内容をより理解させるために各種プレゼンテーションが多用されています。これに対して、教育の世界においては、生徒に対する先生のプレゼンテーションという考え方があまり行われていないように思います。

 本年度の県教育委員会運営方針の中に「新たに取り入れるべきものには果敢にチャレンジしながら、教育行政を推進します」との力強い一文があります。私は「群馬の未来を担う人づくり」のために、教育におけるプレゼンテーションという視点も果敢なチャレンジとして検討していく時期がきていると思います。私も微力ながら、知的財産教育という観点からこの方針をバックアップしていきたいと考えています。













(上毛新聞 2006年5月21日掲載)