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元群馬町教育長 山本 幸雄さん(高崎市金古町)

【略歴】信州大卒。60年、群馬に移り旧小串中(嬬恋)で教諭生活をスタート、堤ケ岡小などで教頭に。群馬中央中の校長を退職後、群馬町教育長を2期務めた。


学び続ける気概

◎男性も勇気を出そう

 いま私たちの身辺には、いろいろな変化が見られようになってきた。子供たちの遊ぶ声や姿が住宅地や公園からも消え、活気があった市街地の商店街も、訪れるたびに閉じた店が目に入る。郊外にある大型店の広い駐車場は車であふれ、買い物客でごった返している。敬遠された銀行や郵便局のATM(現金自動預払機)、駅の券売機の利用も定着してきた。パソコンで買い物や航空機、ホテルの予約までもでき、携帯電話による電子商取引までも普及しそうである。

 車やパソコン、携帯電話がなくとも生きてはいけるだろうが、これらが社会の隅々まで行き渡り、生活必需品として組み込まれた場合には、高齢者や機器操作に不慣れな人にとっては、便利なものがもっとも不便になってしまうのではないか、という一抹の不安がよぎる。

 最近は自治体や民間の社会教育機関、施設が、趣味や興味の増進、生きがいづくり、新技術や資格の取得など、社会の変化に対応した幅広い事業を展開している。学習・文化センター、図書館、博物館、美術館、体育館、公民館、集会所等でも各種教室や講習が準備されており、また大学や高校の開放講座、各種専門学校、放送・通信教育等もあって、その内容や方法も多彩で優れたものが準備されている。

 やる気さえあれば、いつでも学習ができる環境が与えられているともいえる。しかし、交通等の移動手段を持たない人にとっては、住んでいる地域によって、その学習の機会が限られてしまうという課題もある。

 この意味からも、住民の居住地にある公民館等の教育施設の存在とその充実・活用は極めて重要な意味を持ってきている。私も公民館や国際交流協会が開く教室や講座、高校、大学の開放講座等での学習経験があるが、その充実した内容やプロの指導者の識見の深さにも触れられ、啓発されたことに感謝している。

 残念に思えたのは、いつも男性の参加率が女性に比べて非常に低いことである。確かに男性には参加をためらう、また参加しにくい事情もあると思う。私の心の片隅にも、参加することへの不安や抵抗感がいつも付きまとっていた。恥ずかしい、いまさら、という消極的な考えが幾度も頭の中を駆け巡った。

 しかし、参加を決断すると、年齢や性別に関係なく共通の目的を持った人たちとともに、新しい知識や技能、考え方などが学べるという喜びや、学ぶ意欲に変わっていくことを知った。今までの職歴の中で培われた、狭い知識やものの見方・考え方だけにとらわれていると、変化の激しい社会から置き去りにされてしまう気がする。

 高齢者になっても心身ともに健康で、社会貢献に心がけ、生きがいある余生を送るためには、学び続ける気概を持つことが大切である。学びたいと思うときがチャンスである。学びへの門戸はいつでも誰にでも開かれている。まず勇気を出して学習に参加することによって、心のわだかまりが、どんなに自分を粗末にしてきたかが分かり、自分を変えられる明るいきっかけとなる。













(上毛新聞 2006年5月20日掲載)