視点 オピニオン21
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東京福祉大学教授 矢端 義直さん(前橋市若宮町)

【略歴】文部省社会教育局、総理府青少年対策本部、国立赤城青年の家、県教委、県立青少年教育施設などを経て、05年4月から現職。専門は生涯学習、社会教育。


観光立県に向けて

◎もてなしの心を大切に

 県庁の機構改革が進む中、観光による地域活性化等を強力に推進するため、本年度、観光局が新設された。

 そこで、地域活性化について、「生涯学習」の視点から考えてみたい。

 一つは、「観光案内ボランティア」の活動である。

 中之条町や子持村・白井宿(現・渋川市)、甘楽町、鬼石町(現・藤岡市)、館林市等では、観光で訪れた人々のためにボランティアによる観光ガイドが活躍しており、来訪者から喜ばれている。いずれのガイドの会も、市や観光協会等が主催した郷土理解や史跡等の学習講座を終えた人たちが、その学習成果を生かし活動している。

 この活動が県内各地に競って誕生し、会員のキャリアアップのための学習の機会やガイドの会相互の情報交換の場が確立されることを期待したい。

 また、活躍するボランティアの人々を奨励・顕彰し、例えばふるさと学芸員とか○○地域伝道師等の名称を認定すれば、そのことが活動する人たちの生きがいや励みになるのではないだろうか。

 二つには、「郷土料理」を充実することである。

 先人から受け継いできた、その地域ならではの郷土料理の学習会や特産物を生かした新しい料理の研修会等も各地で実施されている。また、近年では、中高年男性の料理教室も盛んになっており、各地にそば打ち等のサークルも誕生している。このような学習機会で取得した知識や技能、そして人材が地域で生かされていくことが望まれる。

 三つには、「地域の人々との触れ合いや体験活動の場」を整えていくことである。

 都会の人々が地方の豊かな自然の中で、地元の人々との交流や自然体験活動等を通して、余暇を過ごしたいというニーズが増大している。

 新治村(現・みなかみ町)、川場村、片品村・武尊等では、そのニーズに応える活動がすでに展開されて久しい。竹細工やわら細工、草木染、漬物・こんにゃくづくり、そば打ち等々、地元の人々の持つ文化が地域おこしの大きなパワーになっている。

 県内には、地場産業を支える人々をはじめ、自然の中での工芸品の制作や芸術活動、自然農法による自給生活等にあこがれ、移住してきた人々もいる。また、ここ数年失われつつある伝統文化や自然環境等の復活に燃える団体なども誕生している。これらの人々の活動や経験が地域おこしに生かされれば、来訪者により豊かな体験や触れ合いの場を提供できることになるだろう。

 以上、三点を述べたが、重要なことは地域の人材の発掘・活用であり、地域住民と関係機関・各種団体等とのネットワーク化であろう。また、来訪者のニーズの把握に努め、それに応えるべく努力を積み重ねていくことである。そして、何よりも大切なことは、地域住民一人一人の温かいもてなしの心であろう。










(上毛新聞 2006年5月15日掲載)