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◎子供たちの心を豊かに ある二月の冷え込む晩、仲間と酒を酌み交わしながら、環境問題を熱く語りました。私たちが子供のころは寒風の中でのドジョウすくい、夕涼みをしながら見たホタルの乱舞、早起きしてのオニヤンマ捕り、スズメのうるさいほどのさえずりやセミのBGMを聞きながらの昼寝、加えてチョウの乱舞など、子供心に感動を覚え、心豊かにはぐくんでくれました。そんな豊かな自然も気が付いたら、われわれの身の回りから姿を消していました。 失われた自然を少しでも復活させ、子供たちの心に「感動」や「癒やし」を感じさせることができれば、「ほころびを見せている子供の心」にほころびを繕う灯がともり、感受性が豊かで自然の大切さを受け入れる子供が育ってくれるといいな…。そんなことを語り明かしました。 その後、何人かの賛同者が集い、初めに手掛けたのは湧水(ゆうすい)量が多く、荒れ放題だった村有地の整備でした。自然の持つ潜在能力を信じ、人為的な整備は最小限にとどめた結果、ホタルが舞うようになり、最近二年続けてカモが営巣し、ヒナが親について泳ぐ姿を確認することができました。小魚も姿を見せ始め、いろいろな形で変化や効果が目に見えるようになってきました。 次に休耕田を借り、年間を通して水を張ったらどのような変化が起こるか、確かめてみたいという意見がありました。地権者の善意により、三ヘクタール余の休耕田を借りることができ、年間を通し、水の管理だけをしました。初めに起きた変化はカエルがうるさいほど鳴き、オタマジャクシが泳ぐ程度でしたが、二年目にはわずかですがホタルが飛び始め、自然の持つ復元力の大きさに、目からうろこの落ちる思いがしました。われわれには気付かなかったが、水面下では大きな変化が起きていたことをホタルに教えられました。 三年目はホタルの乱舞が見られるようになり、水面を飛ぶホタルの軌跡は感動ものでした。これを機会に村内の子供たちに呼び掛け、ホタル観察会を始めました。昨年は昭和の森山荘に泊まり、自然体験学習を実施した東京の塾の子供たちからホタル観察会の要請がありました。暗闇を歩くことのない子供たちばかりなので、暗闇を歩いたこと自体、興味と不安が同居し、自然体験のプロローグとしては最高の演出ができました。 ホタルが足元の草むらや水面、そして竹林の中まで光っている光景に歓声が上がり、頭や着物にとまると、喜びと感動で嬉々(きき)とした子供の姿を目の当たりにしました。そんなとき、子供の持つ感性と表現の豊かさを感じずにはいられませんでした。手に取ってしみじみ見ていた女の子が「温かくないのに光っている」と言った一言は、今でも忘れることができない、とても印象的な言葉でした。 ホタルとの小さな出合いが子供たちの琴線に触れ、ホタルから得た感動が心を豊かにし、健全な子供が育つことを願わずにはいられません。 (上毛新聞 2006年5月2日掲載) |