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館林市教委学校教育課長 青木 雅夫さん(館林市松沼町)

【略歴】群馬大教育学部卒、兵庫教育大大学院修士課程修了。県自然環境調査研究会会員。前兵庫上越教育研究会長、前館林第十小学校長。

痛ましい水辺の環境


◎アレチウリの侵食

 今ある自然を生かして生活の中に潤いをはぐくむのでなく、開発、治水という名の下に、安定した自然の生態系を一気に破壊し、「豊かな生活空間」を創造してきているのが、現状ではないだろうか。このような方向を一概に否定はしないが、人類の未来を見つめたときに、真の豊かさの追求という意味では重大な課題があると思う。

 私は、それを戦後民主主義が過去の日本のよさの多くを否定して、自分勝手でわがままな人間を多量に生み、病的な混乱を起こしている現在と重ね合わせて見ている。一方、豊かな水をたたえる河川は、これまでも黙々と田畑を潤しながら、豊かなお米の国日本をはぐくんできたし、これからもそうあらねばならないと思っている。

 河川には激しい環境の変化に適応してきた野生植物が生育している。カワラヨモギ、カワラハハコ、マルバヤハズソウ、ツルヨシ、クサヨシ、木本ではタチヤナギ、カワヤナギ、ジャヤナギなどのヤナギ属が優占する。タチヤナギは川の激流がかぶるような所に生え、その幹は太くなっても直立できず、たいていは大蛇のように河床をはう。

 昨年、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)が施行され、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取り扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うことになった。そして、平成十七年十二月十四日、特定外来生物の第二次が指定され、その中にアレチウリという北アメリカ原産ウリ科アレチウリ属の外来植物があった。

 「ウリ」といえば、すべてつる植物で、ものに絡み付いて繁殖する植物群である。われわれに身近なキュウリ、ヘチマ、ヒョウタン、カラスウリ、アマチャヅルなども属は違うが、ウリ科である。アレチウリは特に水辺に大繁殖をしている。葉は薄いが、キュウリに似ていて、茎には粗い毛が密生している。雌雄同株であるが、花序には雄花花序と雌花花序がある。果実には一センチほどの長いとげが密生するので、アレチウリの繁殖している河原を歩くと、そのとげがズボン繊維の間に入り込み、すねがこすれて痛い。

 平成十六年秋、東毛地区に生育するアレチウリの分布状態を調べてみた。粗い調査ではあるが、東の縁、板倉町から太田市薮塚町付近まで踏査し、生育、あるいは群落をつくっている場所を見つけ、生育している群落の評価を行い、併せてGPS(衛星利用測位システム)でその群落場所を記録した。それを地図上に表すと、利根川、渡良瀬川などとその支流域の全域(市街地を除く)で見られ、その評価ポイントは三十一カ所に及んだ。

 多くの河原がアレチウリに侵食され、一面に広がるさまは、あたかも侵略者が先住民を追い出しているようにも見える。水辺を覆うようにアレチウリの網がかかっているのを見て、インベーダーに侵入されている痛ましい水辺の環境に心が痛む。
















(上毛新聞 2006年4月27日掲載)