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◎県内書人の悲願実現を 県内の主な書展は県書道協会を中心に、「県書道展」「群馬教育書道展」のほか、上毛新聞社主催の「上毛書道三十人展」がある。また、メセナ活動の一環として、高崎信用金庫と藤井繊維(サントノーレ)など高崎市内の企業が支援する「群馬書道大賞・奨励賞展」や、多胡碑記念館の「新春群馬書作家展」、女流書家による「ぐんま女流書道協会展」、当館での「県書道展受賞作家選抜展」、さらに各会派の展覧会などがあり、各人が日々研さんを積んでいる。 群馬には半田神来、大澤雅休、浅見喜舟、大澤竹胎、中島邑水、岡部蒼風、徳野大空、黒澤春来、田村翠渕、堀越呼雲、米倉大謙、下谷東雲などのほか、書道界の礎を築いた多くの作家がいる。当館はこれまでに、山本聿水、小板橋東崖、金澤子卿、西林乗宣、関口虚想のほか、県書道界の重鎮作家の作品展を開いてきた。 私には書の経験はないが、作品にみなぎる風格を感じ取ることができ、底知れぬ感動を覚えた。書は絵画と同様、伝達手段から生まれたものだ。しかし絵とは異なり、彩度がない。黒から白への無限ともいえる明度の世界だ。そこには筆致が生み出す墨線の濃淡、空間が織りなすドラマがあり、作品からは修練を積んだ作家の精神と個性、東洋的文化が強く感じられる。 ところで、日本各地に公立の美術館は数多く存在するが、書道館は少ない。己の全精力を注いで創出した表現を発表する常設の場が少なく、多くの人に作品を見てもらえないという状態に、作家のむなしさを痛切に感じる。創作意欲の根幹にかかわる問題だ。そうした中、千葉の成田山書道美術館や現代書の父といわれる比田井天来の故郷、長野の望月町天来記念館を訪れた際、群馬の先人書家の作品が展示され、感激した覚えがある。 とくに大澤雅休の「ひたむきに、ひとつのものを、押しすすめ、いゆかばよろし、ゆきつかずとも」の言葉に触発された。微力ながら、十二年かけて約百人の県内書作家宅を訪ね、書道との出合いや思いなどを聞き、制作現場のビデオ収録に努めた。 群馬には残念ながら先人の作品を一堂に集めた常設展示館がない。県書道展では、出品作品を会期中に展示替えするという大変な作業に加え、会場が高崎市の県立近代美術館と前橋市の昭和庁舎(旧県庁舎)に分かれての開催という状況に接し、驚きを隠せなかった。埴生(はにゅう)の宿ではないが、埴生のミニ宿みたいな当美術館でも、できることは今後も続けてゆきたいと思っているが、根本的な解決にはつながらない。同じ芸術に携わる者の一人として、県内書人の悲願である常設展示館の実現を願っている。 (上毛新聞 2006年4月12日掲載) |