視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
群馬大学教育学部助教授 西薗 大実さん(桐生市東)

【略歴】東京都出身。東京理科大大学院修了。薬学博士。専門は家政学と環境。現在は国や県が設置する環境関連の複数の審議会で委員を務める。


バイオマスエネルギー

◎目標定め実行に移す時

 バイオマスエネルギーは、二酸化炭素排出削減の有力な手段だ。

 バイオマスとは、現在の動植物由来の資源を指す。これに対して、石炭や石油などの化石燃料は、数百万年以上も前の、太古の生物由来の資源と考えられる。どちらも、燃やせば二酸化炭素が発生するが、両者には決定的な違いがある。

 バイオマスは、現在の大気中の二酸化炭素からできたものなので、燃やしても元の状態に戻るだけで、二酸化炭素は増加しない。これをカーボンニュートラル(炭素収支ゼロ)という。一方で、化石燃料は太古の二酸化炭素からできたものなので、燃やすと現在の二酸化炭素に上乗せになる。これが、地球温暖化の主因と考えられている。

 脱温暖化社会への仕組みづくりを本格化させる上で、バイオマスエネルギーの導入は欠かせない。こうした一般論ばかりでなく、そろそろ具体的な目標を定めて、実行に移すべき時期にきている。そこで、地域特性や社会的影響、環境負荷低減度などを考慮して、本県で推進したい分野を考えてみよう。

 まず、学校への木質ペレットストーブの導入である。木質ペレットは、おがくずや樹皮などから作る粒状の燃料で、北欧で利用が進んでいる。日本でも一九七〇年代の石油ショックを契機に普及したが、だんだんと廃れてしまった。しかし、岩手県では燃料を自動供給できる新型ストーブを開発し、小学校などに導入している。環境教育の効果も期待できて、一挙両得である。ペレット生産設備も含めて、ぜひ本県にも導入したい。

 次に、ハウス栽培への剪せん定てい枝や間伐材の燃料利用である。トマトやイチゴの栽培では、冬から早春には重油を燃料として加温しており、栽培全体に投入するエネルギーの六割以上をここで消費している。現状では、輸送エネルギーを使っても、遠距離(海外を含む)の露地栽培ものの方が、環境への負荷が低いことになる。そこで、加温に剪定や間伐などの木を使うのである。木質ペレット化でもよいが、ガス化技術も使えよう。

 これら二つの利用法は、使用量の見積もりがしやすい分野であり、需給バランスを考えた地域計画が可能な点で有利である。

 そして、もう一つは家畜ふん尿のエネルギー利用である。メタン発酵により可燃性ガスを得る方法自体は古くからあり、県内でも実施例がある。この方法の利点は、エネルギー面だけでなく、総合的な環境負荷低減ができることにある。本県では地下水中の窒素分の増加が懸念されているが、その一因が家畜ふん尿にある。窒素分はエネルギー利用の際に液体成分として分離されるので、これを流すことなく処理できる方法を確立すれば、二つの環境問題の対策を一度に進められる。


(上毛新聞 2006年4月3日掲載)