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◎まず地域の特性知ろう 山の雪が解け出し、小川や河川の水量が増してくると、子供たちが華やぐ新学期が始まり、学校は明るく一段と活気づく。黄色い帽子をかぶり、まだ背丈に比べて大きなランドセルを背負い、一年生が上級生に添われて小走り気味に元気よく登校してくる。校庭には遊びに熱中する元気な子供たちの声が交差する。こんな光景は人々に至福の時を与えてくれる。 新学期は子供にとって、新しい友達や先生たちとの出会いがあり、環境の大きな変化に戸惑いながらも親の願いや期待を背負って、夢や希望に向かって大きな一歩を踏み出す時期である。また、教師にとっては決意を新たにして、子供たちとの出会いを大切にし、共に成長できる喜びを強く感じる時期でもある。このことは中学校でもいえることであり、新学期のもっている意義は大きい。 学校は児童生徒の学ぶ場所であるが、同時にその地域の人々にとっても、心のよりどころともなっている。また、学校にはそこで学んだ人たちの業績などとともに、いろいろな形で学校を支えてくれた地域の人々の思いが、長い歴史の中で校風や伝統として生きており、児童生徒の人間形成に大きな役割を果たしている。 私は教職在任中、転任・転補を含めて高山地のへき地校(現在廃校)や農山村地および都市近郊の小・中学校など九校の勤務経験をもっているが、どの学校にも地域の自然や地形等などの影響による特性があることを強く感じている。それは、そこに住む人々が、地域を取り巻く自然や人々との交わりや生活の中で、よりよく生きるための知恵として培われてきた、ものの見方や考え方が広く生活の中に定着し、それが学校の伝統や校風の形成に大きく関係しているためではないかと思われる。 児童生徒は、このような環境の中で育ってきている。このために地域の特性をよく知り、これを生かすことは教育の心にも通じるため、教師にとって極めて大切なことであると考えている。 新学期を控えて、年度末の人事異動で大勢の教師が他市町村に転出し、また、合併による地域の広がりから、今までとは地域の特性が大きく違った学校に転補することもあったと思う。前任地でよいと思ってやっていたことが、必ずしも新任地で受け入れられるとは限らない。大切なのは過去ではなく、目の前にいる児童生徒である。まず、地域を知ることの大切さを基本にして、学校を取り巻く地域の自然や歴史を知り、地域の人たちの教育への思いを感じ取ることである。 知ることは好きになる近道である。こうすることが、新任地への愛着を強め、温かい感覚で児童生徒に接することができるようになり、その成長を支える大きな力になってくると思う。児童生徒たちはきっと目を輝かせて先生を信頼し、また地域の人々もこのような先生を力強く支援してくれると思う。また、このことが教師の意欲や力量を一層高め、学校が活性化し、伝統や校風にさらに磨きをかけることになる。 (上毛新聞 2006年4月1日掲載) |