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◎注目したい二つの事例 市民大学と総称される中高年の学習活動が各地で活発化している。 市民大学、自由大学、市民カレッジ、雑学大学、○○塾等と名称は多様である。従来の成人学習の多くは、公民館等が企画した学習機会に参加するといった行政主導の学習形態であったが、近年、公民館等の講座を修了した仲間や公益的な活動をめざす市民団体等が次々と生まれ、市民自身の手による学習活動が盛んになってきている。 ここでは、市民自らが企画運営の中心となって学習の場を生み出してきた具体例を二つ挙げ、市民が主役の生涯学習の在り方を探ってみたい。 一つは、間もなく三十周年を迎えようとしている「吉祥寺村立雑学大学」(東京都武蔵野市)である。 「市民同士で、それぞれの体験や知識を交換し合える場がほしい」。大学の始まりは、一杯飲み屋でのこんな雑談から始まったという。 「ただの場所で行う」「講師謝礼はただ」「受講料もただ」の三つのただをモットーに始まったこの大学は、毎週日曜日の午前中、二時間程度開講されている。 講義の内容は、旅談議や介護・健康の問題、そばの打ち方から大学教授による哲学の話までと多彩である。私の友人夫妻もここでの学習を楽しんでいるが、時には講師になることもあるという。この大学のホームページをのぞいてみると、今までの講義内容や今後の予定も分かり、ボランティア講師の募集や受講者同士の情報交換等も行っていることがうかがえる。 この大学のほかにも、都内には神田雑学大学、北区雑学大学、東京雑学大学等が誕生している。 次に、平成元年から始まった「むなかた自由大学」(福岡県宗像市)を見てみたい。市民ボランティアによる実行委員会が置かれ、企画から運営のすべてを行っており、全国的に著名な人を招いての講演会を開催している。 会員は登録制で、年会費は一万五千円とやや高額であるが、登録者数は発足当初から二千―二千七百人を維持しており、月一回の講演会はほとんど満席の状態(会場は常時二千三百席)であるという。 講師人選のコンセプトは超有名人であり、一回の講演会に千円以上の金額を払っても話を聞きたい人で、その選定は次年度に誰の話を聞きたいかというアンケートを実施し、そこでの上位の人を中心に選んでいる。 また、講演会当日には地元で学習活動を行っているグループによる発表会も併せて実施しており、日ごろの学習成果の発表の機会としても好評を得ている。年十二回の講演会以外にも、特別事業として「歴史散歩」「音楽会」「洋上セミナー」等を計画しており、参加者も多いという。 いずれも、市民ボランティアが企画運営する市民の学習の場であり、生涯学習のフロンティアとして注目したい。 (上毛新聞 2006年3月19日掲載) |