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◎身の丈に合った地域を 「自立」という言葉を『広辞苑』で調べると「他の力によらず自分の力で身を立てること。ひとりだち。他に属せず自分の地位に立つこと。独立。自ら帝王の位に立つこと」と記されています。 「三位一体改革」とか「地方の自立」、身近なところでは「地域の自立」「家庭の自立」、また「子供の生きる力」「子離れのできない親」など、「自立」「自助」「共助」に関する言葉を目や耳にすることが多くなりました。これは戦後の政治や社会のスキームが生み出した産物の一つで、象徴的な現象がライブドア事件ではないでしょうか。 私は、戦後の混乱期には地域自治はしっかり守られていたように思います。「井戸端会議」と称し、地域の情報交換の場をつくり、子育てや地域の問題を話し合い、時には愚痴を言い、ストレスをためないよう工夫する知恵を持っていました。その結果、地域に安らぎや安心感が生まれ、健全な地域を育ててきたような気がします。 戦後の苦しみを乗り越え、国民が豊かになると、国は権力を集中させ、地方に影響力を持ち、今まで地域に根づいていた地域自治を弱め、日本独特の社会を築いてきたように思いますが、そう感じるのは私だけでしょうか。 私の目には、国は県、市町村という縦型社会をつくり、居心地の良いスキームに乗り、国民には甘露を与えてきたような気がします。歴史が物語っているように、権力の集中には限度があり、必ず崩壊してきました。「平家にあらずんば人にあらず」と豪語していた平家も栄枯盛衰の波にのまれ、「おごる平家は久しからず」という言葉を残し、消え去っていきました。 今、この国の「かたち」を変える時を迎えていると思います。国は小さな政府を標ひょうぼう榜し、大手企業は大きな痛みを乗り越え、表面的には落ち着きを見せ始めて景気は上向きに転じたと報道されています。しかし、国民の不安を払ふっ拭しょくするには至っていないのではないでしょうか。 これからは、人々が安心して生活できる環境を整えなければなりません。そのためには「隗(かい)より始めよ」という故事のとおり、まず自分が安心して生活できる場所を創つくることだと思います。言い換えれば、自分の身の丈に合った地域を確立することだと考えます。 小寺知事が道普請型の補助金を地域に投入し、地域の活性化を図ったことは地域自治の確立を意識した制度で、多くの県民がこの政策を評価していると思います。米沢藩主の上杉鷹山(ようざん)は、灰の中の残り火を「火種」とし大切にする精神を藩全体に浸透させ、藩政改革を成功させました。時代は変わっても地域を活性化する精神は変わらないのだな、と思いました。 自立の原点は、個々の足元を温める火種を見つけることに、ヒントが隠されているような気がします。 (上毛新聞 2006年3月14日掲載) |