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内閣府参事官 小暮 純也さん(埼玉県草加市)

【略歴】伊勢崎市出身。前橋高、東大法学部卒。80年自治省入省。総務省地域放送課長、財団法人市町村アカデミー研修部長などを経て、昨年8月から現職。

雪害への備え


◎認識遅れは対策後手に

 昨年八月に内閣府防災担当に異動してから、震度6弱の宮城県沖地震、九州地方を中心に大きな被害をもたらした台風14号などの災害対応に追われていましたが、昨年末からは本年度最大の災害である雪害の対応に明け暮れています。

 新潟県中越地震の人的被害は死者五十九人に上りましたが、今冬の記録的な大雪はすでにその倍以上の被害が発生しています。二十日までに全国の死者は百三十二人、お隣の新潟県では二十五人に上り、まさに大災害となっています。

 過去の雪害状況を見てみると、戦後最大の被害を出した昭和三十八年豪雪が死者・行方不明者二百三十一人、次いで五十六年豪雪が死者・行方不明者百五十二人、さらに五十九年豪雪は死者百三十一人に上っています。今冬はほぼ二十年ぶりの大雪被害です。

 ところで、死亡状況を見てみると、屋根の雪下ろしなど除雪作業中の死亡が全体の約四分の三。また、六十五歳以上の高齢者の方が全体の約三分の二を占めています。今冬は、十二月から一月にかけて大雪が降り続くという異例の降雪状況もありますが、高齢化、過疎化の影響も大きいと思います。

 国としても、大雪被害に昨年末から速やかに対応しています。特に高齢者の住宅などの雪下ろしを支援するため、二十年ぶりに大雪被害に災害救助法を適用。障害物の除去、すなわち屋根の雪下ろしや住宅の除雪を実施した場合に費用を負担したり、自衛隊の災害派遣によって、公共施設に加えて高齢者世帯などの雪下ろしも実施してきています。さらに、市町村が行う高齢者世帯などの雪下ろし支援に要する経費についても、本年度は特別交付税で財政措置することを明らかにしています。

 もとより、災害から住民を守るのは、市町村が主役です。十二月からの大雪を雪の降り始めが一カ月早いだけだと思い、災害になると認識するのが遅れたところは、対策が後手に回っています。平常時ではなく災害時と認識して、前例にとらわれず、早くからいろいろな手段を講じたところは、被害が少ないと思います。

 群馬でも、みなかみ町が大雪になっていますが、幸いなことに死者は出ていません。町と県が連携して早めに対応し、自衛隊とも協力して対策を講じたためではないでしょうか。また、行政の「公助」だけではなく、地域やボランティアによる「共助」がうまく働いたからではないでしょうか。

 気象庁によると、今後は気象の変動が大きいことが見込まれ、引き続き大雪や雪崩、落雪、融雪災害に注意が必要です。防災では、何よりも人命の被害を防ぐことが要よう諦ていです。これからも、あらゆる手段を講じて、人命被害が発生しないよう、皆で力を合わせて取り組んでいきたいものです。

(上毛新聞 2006年2月21日掲載)