視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎活用と保存に努めたい 彦部家は十三世紀中ごろ、鎌倉時代に陸奥国菊田郡彦部郷(現岩手県紫波町)の領主を拝命し、その折、従来の高階姓からその土地の名である「彦部」を名乗るようになり、以来、今日まで二十九代を数えます。一五六〇(永禄三)年から桐生に移り住みました。 一昨年、後援会の主催で一泊二日の東北旅行「彦部家ゆかりのルーツ探りの旅」が企画され、会員、家族、郷土の皆さん三十一人が参加しました。当日は絶好の秋晴れで、バスは一路、田園風景の続く彦部郷に入りました。「ここが昔の先祖・彦部氏の知行地であったか!」と参加者一同、まさに感慨無量の思いでした。交流会場の川前公民館では思いがけず大勢の地元の皆さんから「お殿様、お帰りなさい」と熱烈な歓迎を受けました。 早速、交歓セレモニーが催され、女性たちは日本一を誇る地元産「ひめのもち」を使ったつきたてのもちや、芋汁を振る舞われ、ステージでは郷土芸能の七福神の舞が披露されました。参加者の石坂さちえさんの「お帰りと/われを迎えくださるる/彦部の里の/人らやさしも」の即詠のごとく参加者一同、ただただ感激するばかりでした。午後は彦部氏の墓とされる正養寺境内の石碑や、彦部氏の館跡と伝えられる「機織館跡」などゆかりの地を見学し、周辺に残る伝説にも耳を傾けて、かつて先祖が暮らした風土と歴史を学びました。 最後に訪問した彦部小学校では三回も「ヒコベ」を繰り返し歌う素晴らしい校歌が披露され、昔日をほうふつさせられました。これらの様子は岩手めんこいテレビ、岩手日報、盛岡タイムズなどを通じ、広く地元岩手県の皆さまに紹介されました。お土産に頂いた日本一のもち米「ひめのもち」は当家で採れた銀ぎん杏なんと共に炊き込んで「銀杏ご飯」を作り、秋の紅葉狩りウイークに伝統の「けんちん汁」とともに来館者に薦めたところ、大変好評でした。 以来、その後も毎年継続して「ひめのもち」が取り持つ住民間交流をさらに深めております。 翌日、民話のふるさと遠野市に立ち寄り、方言を駆使した語り部の「遠野昔物語」を聞き、大いに伝統文化を楽しみました。早速、後援会では桐生市にいまだ二百以上も残る多くの民話の語りの場に四百年の歴史を持つ彦部家の母屋を提供することを考え、桐生市にもある語り部・朗読の会に働きかけたところ、快く受け入れてくださり、本年度は三回実施することができ、好評を得ました。 中でも昨年十一月に実施した「彦部家の歴史から見た平家物語」は圧巻で、来訪者を大いに満足させた様子でした。これも今後、重文屋敷活用の一助として継続事業に取り入れていきたいと考えています。まとめになりますが、今後も「温故知新をモットーに地域に根ざし、先人が残してくれた文化遺産の活用と保存」に努めてまいりたいと思います。一人でも多くの皆さんのご来館・ご参加をお待ち申しております。 (上毛新聞 2006年2月14日掲載) |