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◎人生は常に開始の連続 今年も球春の便りが届き始めた。昨年は新球団の誕生やセ・パ交流戦、ファンサービスの向上など「経営改革元年」と言われたが、引き続きこの努力を期待したい。 ところで、われわれ家族は千葉ロッテマリーンズの大ファンである。このチームも昨年、改革の中にあった。初のセ・パ交流戦は、パ・リーグの百五勝百四敗七分けと実力伯仲だったが、優勝したのは万年Bクラスのロッテだった。「このチームはなぜ、こんなに変わったのだろうか」。昨年はこの点が注目され続けた。そして激戦の末、三十一年ぶりにパ・リーグを制覇し、日本一、初のアジアカップ王者と、ファンにとって夢のようなエキサイティングな一年となった。と同時に、多くの示唆を与えてくれた。 ボビー・バレンタイン氏がこのチームの監督に初めて就任したのは、一九九五年にさかのぼる。以来、最も尊敬する一人だが、公私共に教えられることが多い。ドラフト一位でドジャースに入団し、けがで現役を退いた後、三十六歳でアメリカン・リーグの最優秀監督に輝いた。以前、「もし、野球界に入っていなかったら何をしていたと思うか」と尋ねたことがある。「多分、大学教授になっていただろう。教えることが好きだから」との答え。リーダーとしての人格はさまざまな経験を経て磨かれてきていたのだと思う。 私は、このチームに新しい人事思想を見る。それは、(1)敬意をもった人事管理(2)ポジティブ・シンキング(3)選手に自信を植えつけること―などである。「敬意をもって人を管理する」(managing with respect)というのは、権限でなく理念で人を動かし管理するもので、価値観の根源は「人間尊重の精神」である。選手(社員)を重視し、尊重する。選手(社員)は、チーム(組織)全体と個人の成功を目標にして一層努力する。「よいプレーヤーがいるから勝つのではない。よいプレーがあるから勝てるのだ」と言ったことを思い出す。 ポジティブ・シンキング(positive thinking)とは、「積極的に、前向きに考える」「プラス思考」のこと。彼の著書『一〇〇〇本ノックを超えて』で「一つの扉が閉まると、必ず新たな扉が開く」と言う。そういえば、卒業式をアメリカでは「コメンスメント」(commencement)と言うが、終わりでなく始まりの日という意味だ。人生にはいつも挑戦が必要であり、常に「開始」の連続である。 それにしても、昨年のパ・リーグ優勝決定戦は激闘の連続だった。その最終戦、私は仕事を終え、妻たちと千葉マリンスタジアムのパブリック・ビューイング(大型画面での観戦)に参加した。雨の中、一万二千人のフアンが応援していた。序盤リードされたが八回に逆転し、勝った。ボビーが宙に舞い、一万二千人が雨と涙にぬれ歓喜した。ふと天を仰ぐと雨がとめどなく顔に当たり、カクテル光線の中、祝福のシャワーを浴びているようだった。今年は、どんなドラマが展開されるだろうか。各チームの健闘を期待したい。 (上毛新聞 2006年2月10日掲載) |