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県立尾瀬高校自然環境科主任教諭 松井 孝夫さん(沼田市利根町)

【略歴】92年千葉大卒。西邑楽高を経て、97年尾瀬高教諭となり、翌年から現職。同校理科部顧問。ぐんま環境教育ネットワーク代表理事。

中高連携


◎地域ごとに交流深めて

 中高一貫教育というと、六年制の「中等教育学校」のイメージが強い。しかし、このほかに「併設型」と「連携型」の二つのタイプの中高一貫教育がある。「併設型」は中学校と高校が同一の設置者で、高校進学のための選抜を行わないなどの特徴があり、「連携型」は授業や部活動等で教員・生徒間交流を深めるかたちで、ゆるやかな連携が特徴である。

 県内では「連携型」の中高一貫教育が尾瀬、嬬恋、奥多野の三地域で行われている。ここでは、中学校と高校が一対一の関係ではなく、複数の中学校と一つの高校で連携を深める実践研究をしている。

 私自身は毎週の時間割に組み込まれている交流授業や行事などの連携を通して、中学校の実態を垣間見ることができた。中学校の教員のきめ細かな生徒指導や学級経営などを知ることは、高校の現場において非常に参考になっている。その一方で、中学校の生徒や教員との交流の中で、高校進学に関する進路指導の難しさを感じることが多くあった。

 特色ある高校づくりが進められている昨今、中学生や保護者、教員にとって各高校の特色をきちんと理解することは非常に難しいと感じる。例えば尾瀬高校では、普通科の中に「人文科学」と「経営情報」の二コースが、自然環境科の中に「自然環境」と「環境科学」の二コースが設置されており、それぞれ特色ある教育が展開されている。しかし、学科名を見ると、コース制が敷かれていることや教育内容について理解していただくことは難しい。

 中高一貫教育についても同様に間違った理解をされている場合がある。三つのタイプがあるためなのだろうが、「連携型」においても、連携している中学校以外からの受験はできないととらえている中学校関係者もいる。

 そこで、連携の中学校や高校では、教育内容を生徒や保護者、先生に詳しく伝える努力をしているが、それでも十分に理解されているとはいえない。このようなことは、すべての高校に共通していえることであろう。イメージや学力だけで学校を選ぶのではなく、高校が発信している情報をきめ細かく収集し、それぞれの高校の特色に対する理解を深めていただきたい。

 近年、高大連携が盛んに行われているが、中高連携についても、積極的な検討や実践が必要である。説明会の開催だけではなく、地域ごとに教員や生徒間の交流を深め、中学生に地元の高校の学習や生活をより具体的に理解してもらう機会を増やすことが、主体的な学びにもつながり、それが多くの高校の活性化にもつながると考える。中学校の生徒や教員が、高校の平常の授業を何度も参観・体験することが効果的である。

 「連携型」の実践研究から、その利点を多くの学校が知り、特色ある教育や進路指導、部活動などに導入できることを期待したい。

(上毛新聞 2006年1月27日掲載)