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◎各自の活動が財産に 「地域人」とは何か? ここ十二年、東京と高崎を毎日往復する車内で頭に浮かんだことと実践したことを、この紙面を借りてお話ししてみたい。 「地域人」。ここでは、その定義を「社会人と家庭人の中間にいる世話人」としてみよう。 ほとんどすべての年代で「忙しい」が口にされる昨今、仕事をしっかりして、家族の時間を大切にしていれば、誰もがその立場での優等生であることに疑いはない。ただここでは、仕事と家庭の間の人、つまり、それをつなぐ人のことを考えてみたいと思う。 やや唐突だが、便利な社会資本と個々の家族だんらんだけでは、豊かな社会とは言いがたいように私は思う。やはり人と人のつながりがあって、その風土に培われた知恵の蓄積と交換、そしてそこで生まれる仲間意識が、私たち一人では味わえない貴重な時間をもたらしてくれるはずだ。だからといって、昔のようにプライバシーを飛び越えたご近所の活動にいそしむべきと言っても始まらない。 ただ、これだけ仕事の拘束時間が長くなる一方でマイホーム志向が強まると、社会と家庭の間にある地域に魅力が薄れ、身近な世の中がただの快適インフラにしか見えてこなくなってしまう。 そこで、一つの提案がある。ぜひ、自分の知識や職能を自身の好みの対象に向かって開いてはいただけないだろうか。地域をこれまでのように町内や学校区単位でとらえるのではなく、もう少し広い範囲で自分の職能を欲している人たちに向かっての「地域人アクション」とも言うべきものだ。 自身の事例で恐縮だが、一例をご紹介する。 私の職業は住宅設計で、二十年間、建て主家族とかなりこだわった家づくりに取り組んできた。 昨今のニュースを含め、家づくりに関する情報は洪水のごとくあるが、それを整理してから自分の考えや生き方に結びつけ、わが家づくりをまとめていく作業は、とても素人で踏破するのは難しい。ほとんどの方は丸投げにするか、自分のレールをあきらめて相手のレールに乗ってしまうことになる。もちろん、これも社会に用意されるべき選択肢だが、その大きな夢に向かう家族たちに、職業人でなく地域人として何かできないかと考え、始めたのが「高崎一日家づくり学校」である。 営業戦力の一環である数多くのセミナーと違い、年に一度だけ自宅を校舎にしたこの一日学校のテーマは、変わらずに一つだけ。「わが家づくりに向かう構え方」、つまり「施主になるための意識づくり」だ。ここで詳細を記すことはできないが、間取りや融資計画などのセミナーでは決して触れない、損得とは別な次元の本音の対話が十年続いている。 この「一日学校」が地域にどれだけの力になれているかは分からないが、こんな個人の思いの詰まった活動が身近にたくさん生まれたなら、いつかはそれらが「地域の財産」を形成していくと、私は期待を込めて活動している。 (上毛新聞 2006年1月22日掲載) |