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さんすい森のリゾート社長 山田 直彦さん(みなかみ町湯原)

【略歴】法政大建築学科卒。東京でホテル経営のコンサルタント会社に6年間勤務後、帰郷してピザ専門店と和食の店を経営。湯原温泉街振興会副会長。

温泉街のまちおこし


◎地道に「新しい物語」を

 「温泉街にもう一度にぎわいを!」。そんな思いで私たちのまちおこしがスタートしました。旧水上町の中心街、湯原温泉街は、かつて街行くお客さま同士の肩がぶつかり合って、けんかになるほどにぎやかな通りでした。しかし、時代のさまざまな変化に取り残され、お客さまの数は年々減り続けています。通りには空き店舗も目立つようになり、ひどく寂れてしまいました。

 温泉街にある商店、飲食店、旅館などおよそ百軒で組織する湯原温泉街振興会では、この寂れた温泉街にお客さまを呼び戻そうと、昨年六月に「湯原温泉街復活プロジェクト」を立ち上げました。テーマは、水上に訪れたお客さまに湯原温泉街で三時間滞在していただける街づくり。現在、水上には年間二百三十万人のお客さまが訪れていますが、その多くがこの温泉街に立ち寄ることなく素通りしています。今回のプロジェクトはそういったお客さまの足を止めて、何とか温泉街に引き込むことを目標としています。

 まず第一弾として、三時間滞在しても飽きない温泉街を目指して「魅力づくり四点セット」に取り組みました。四つの魅力となる(1)ぶらり歩いて楽しむ(2)体験して楽しむ(3)温泉を楽しむ(4)おいしい食べ物を楽しむ―のそれぞれについて委員会を設置し、会員全員の参加のもとプロジェクトを進めました。

 これまでの取り組みとしては、(1)温泉街にある会員旅館のお風呂を一回五百円で利用できる「入湯めぐりパスポート」の実施(2)町営施設「ふれあい交流館」を会場にした旅館の若だんなや芸者さんによる三味線演奏や八木節の実演(3)お抹茶や木工体験などのイベントを日替わりで開催―などがあります。また、およそ四十軒ある飲食店を写真入りで紹介した情報紙<美お味いしんぼマップ>を作製して、お客さまに配布しました。

 さらに店先で商品を販売して、にぎわいを演出する「八坂祇園市」の開催や、お店のトイレを公衆トイレ代わりに開放したり、雨の日には無料の貸し傘を用意するなど、さまざまな企画を実施してきました。

 一カ月間という短い準備期間のなか、何とか夏休みシーズン、紅葉シーズンとプロジェクトを進めてくることができました。会員の意識も徐々に目覚め始めています。お客さまへのPR不足ということもあり、期待するような成果をなかなか得ることはできませんが、まだプロジェクトはスタートしたばかりです。まちおこしは地道な努力を継続してこそ成し得るものと考えます。

 それと、やはり街の魅力づくりには、個々のお店の魅力づくりが不可欠です。こういったことも同時進行で取り組んでいかなければなりません。まだまだ課題は山積みです。

 今回のプロジェクトを「新・湯原温泉街物語」と名付けました。これは温泉街が新しく生まれ変わる、そのサクセスストーリーという意味です。これからも立ち止まることなく、会員みんなで知恵を出し合って「新しい物語」を作り上げていければと考えます。

(上毛新聞 2006年1月18日掲載)