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◎消費者は五感を大切に 昭和村は山紫水明、風光明美の地です。春になると、目の前に青々とした野菜畑が広がり、新緑が香り、そして残雪を頂いた谷川岳を主峰とする上越国境のスカイラインが訪れる人の多くを感動させ、癒やして、新たなエネルギーがわき上がる緑豊かな台地です。 当地は農業が基幹産業で、多くの野菜や果物、そして全国一の生産量を誇るコンニャク芋を生産しています。農業は教育的仕事と言われているように、生産に当たっては自分の子供を育てるように日々成長する姿を楽しみに育てています。そこに流れている時間は体内時計と同じ速さで長い間、時を刻み続けています。この時の流れが、心地よさと癒やしの空間を醸し出しているのだと思います。 この地で生産に携わっている人たちは、自分の生産物はすべて人間の食料であり、それは人間の生命を維持する大切なものであると自負しています。そのため、生産過程では大変神経を使い、より安全で、よりおいしいものを提供するにはどうしたらよいかを日々考え、英知を絞っています。 多くの食物にいえることですが、取れたてが旬と考え、その旬の味をどうしたら消費者に届けることができるか、試行錯誤を繰り返す日々です。 取れたてに近い状態で消費者に届けることが、消費者に対し生産者ができる最高のサービスと考え、現在は限られた農産物ですが、早朝に収穫し、スーパーの開店時間までには店頭に並べ、消費者に旬の味を感じてもらうために毎日、手間暇惜しまず頑張っています。もちろん農薬は消費者のことを最大限考え、使用制限を順守し、安心、安全を確保していますし、肥料も化学肥料はできるだけ抑え、有機肥料を多くする努力も日々行っています。 ある生産者は冬の間、炭を焼き、木炭を土壌改良剤として活用し、消費者に「うまい」と言われる野菜を提供すべく知恵を絞り、また、果樹園経営者はホルモン剤の一種のフェロモンを使い、減農薬に知恵を働かせ、安心安全を提供しています。この誠意は消費者に正しく伝わっているでしょうか? 情報社会といわれる現在ですが、生産者の思いが消費者に正しく伝わっているかと考えたとき、残念ながら疑問符がついてしまいます。 消費者保護のため、現在は食品表示制度に基づき原産地、販売者等の表示が義務付けられています。この表示は消費者が食品を購入するとき、食品の内容を正しく理解し、選択し、適正に使用する上で重要な情報源ですが、生産者の熱意までは伝えることができません。「地産地消」といわれるように本物の味、いわゆる旬を体感するためには、産地に出向かなければ難しい状況です。 情報も大切ですが、五感で確かなものを手に入れる努力を消費者自身が求めなければならない、しょせん人間はアナログの世界の存在なのでしょうか。 (上毛新聞 2006年1月13日掲載) |